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外出自粛でも「負けない体」を フレイル予防へ 高齢者が今、できること

フレイル予防に効果的な椅子に座ってできるスクワット=東京都健康長寿医療センター研究所提供

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椅子に座り、立ち上がるスクワット。リズムよく行い、フレイル予防につなげる=東京都健康長寿医療センター研究所提供

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために外出自粛が求められる中、加齢により心身が衰えるフレイル(虚弱)の進行が懸念されている。政府による緊急事態宣言が5月末まで延長されることになった今、高齢者ができる予防策とは?

2週間の寝たきり 7年分の筋肉量を失う

 「デイサービスが止まって出かける機会がなくなった」「体重が3、4キロ減ってしまった」

 外来に訪れる高齢者からは、こんな声が上がっている。日本老年医学会(東京都文京区)理事で、東京大高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授(老年医学)は「高齢者が筋肉を取り戻すことは容易でない。外出を控えすぎて、動かないこと(生活不活発)による健康への影響が出始めている」と指摘。「2週間の寝たきりで失う筋肉量は(加齢で)7年間で失う量に匹敵する」といい、筋肉量が減ると「フレイルサイクル」という悪循環に陥る可能性もある。

 つまり筋肉量が減ったことで運動量も減り、エネルギー消費量の低下を招いてしまう。すると食欲が湧かなくなるため食事の量も減って栄養面が悪化。さらに筋肉量は低下する。このサイクルが続くと、要介護となる恐れがある。

 フレイルは、2014年に日本老年医学会が提唱した概念だ。進行すると、体の回復力や抵抗力が低下するだけでなく、感染症が重症化しやすくなるという。予防の3本柱は運動、栄養、社会参加だが、「多くの高齢者は新型コロナウイルスを過剰に恐れすぎて、早くから外出を自粛していた。しかし、一日中テレビを見るなど家で過ごしたり、誰とも話さず食事を抜いたりする生活を続けると、『いつの間にか体が動かなくなっていた』ということになりかねない」と飯島教授は警鐘を鳴らす。

ゆっくり自分のペースで「ながら運動」

フレイル予防に効果的な、椅子に座ってももあげをする運動=東京都健康長寿医療センター研究所提供

 フレイルの予防にはどんな運動が効果的か。飯島教授は室内でできる主な運動として①体を上下に動かすスクワット②爪先立ち③前や横に足を出す足踏み④大股で足を前に出す「ランジ」――を挙げた。いずれも椅子やテーブルにつかまるなどして「ゆっくりと、自分のペースで行う」のがポイント。爪先立ちは、歯磨きをしながらなど「ながら運動」としても取り入れられる。

 また、感染症対策をした上で、少しでも外に出ることも勧めている。筋肉を強くするビタミンDを活性化させるには、日の光を浴びることが重要だからだ。家の周りを歩くなど、新型コロナが流行する以前の運動量を取り戻すことから始めるのがよいとされる。さらにもう少し動ける人は、30分~1時間の散歩をすることも効果的だ。散歩の際は、マスクの着用▽人混みを避ける▽帰宅後は手洗いをすぐに行う――などの感染予防対策が重要になる。

たんぱく質は多く取りすぎるくらいを意識

 栄養面では、栄養バランスを気にしながら、特にたんぱく質を多く摂取するよう呼びかけている。たんぱく質は体重60キロ台で最低60グラムを摂取する必要があるとされるが、飯島教授は「高齢になると、たんぱく質が筋肉になりにくくなる。多く取るよう意識しすぎるくらいで大丈夫」と話す。また、普段の食事に歯ごたえのあるものを積極的に取り入れ、毎食後は歯磨きをして口を清潔に保つことも予防には有効とされる。

周囲のサポートで社会参加を

 積極的に誰かと話をし、社会参加することも重要だ。そのためには家族ら周囲のサポートも重要になる。高齢者が運動や食事を継続できるよう、遠方の家族が積極的に電話をしたり、地域で高齢者を気にかけたりすることで、フレイルの予防を促すことができる。

 飯島教授は「新型コロナは全くの未知のものではなくなってきている。そろそろ先のことを考えなければいけない。高齢者には、普段から健康に気を使っている人と、そうでない人がいるという光と影がある。影の高齢者がフレイル予防に取り組むよう、周囲もサポートしてほしい」と話している。【尾形有菜】

高齢者のフレイル予防のポイント

①適度な運動

 自宅でできる範囲の軽い運動をする。外に出て30分~1時間程度の散歩をすると効果が増します。外出時はマスクの着用と帰宅後の手洗いをきちんと行いましょう。

②バランスの取れた食事

 たんぱく質を多く取るように心がけ、できるだけ歯ごたえのある食べ物もメニューに加える。食後は歯磨きも忘れずに。

③社会参加

 遠方にいる家族に電話をするなどして、自宅にいても積極的に社会参加する。家族や地域も協力し、高齢者の社会参加を促しましょう。

転倒防止、筋力アップ動画でオリジナル体操も

SOMPOケアは、座った状態でも簡単にできる運動を紹介している=動画投稿サイト「ユーチューブ」から

 高齢者施設の運営や介護事業を展開する「SOMPOケア」(東京都品川区)は動画投稿サイト「ユーチューブ」で、高齢者らを対象としたオリジナル体操を公開している。

 座った状態で取り組める転倒防止や筋力アップのプログラムで、同社の介護福祉士、极木(またのき)直子さんが現場での経験を基に開発したという。500ミリリットルのペットボトルを利用し、四十肩(肩関節周囲炎)にならないための肩周りの運動や失禁を防ぐための下半身のトレーニングなどを紹介。腰痛予防のストレッチなども提案している。

 极木さんは「ずっと自宅にいると、自覚のないまま運動能力が低下する恐れがあります。座った状態でしっかりもも上げを意識した足踏みをするだけでも、外出が可能になった際の転倒防止に役立ちます。もちろん、リモートワーク導入で座る時間が多くなった会社員にもおすすめです」と話している。動画は、https://www.youtube.com/channel/UCUOZgbwzKfEPkYGQ44VDM-A。【倉沢仁志】

尾形有菜

毎日新聞東京本社運動部。1992年、宮城県生まれ。2014年入社。宮崎、大分両支局を経て、20年から現職。運動経験はないが、高校時代は放送部(朗読)に所属して県大会で優勝。総文祭という文化部の「インターハイ」出場経験も。父と弟2人、妹が元ラガーマンのラグビー一家で育った無類のラグビー好き。

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