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野球人生を懸けた「最後の挑戦」が新型コロナウイルスの影響で揺らいでいる。元楽天の右腕、横山貴明投手(29)は今季、米球界入りを目指しているが、大リーグなどはいまだに開幕が決まらず、契約には至っていない。やきもきすることがあっても、恩師の言葉を支えに「いつ呼ばれてもしっかり投げられるようトレーニングするしかない」と前を向く。
プロでは不完全燃焼、米球界入り目指す
福島県浪江町出身の横山は福島・聖光学院高、早大を経て2014年、ドラフト6位で楽天入団。主に中継ぎで登板し、18年に戦力外となった。通算成績は30試合で1勝4敗、防御率7・05。最後の1年は右肘のけがもあって不完全燃焼に終わり、「もうちょっと投げたいという思いが強かった」という。
昨季はメキシコや独立リーグのBCリーグ・福島でプレー。大リーグ球団などに獲得の動きがあったことから今季も現役続行を決断した。2~3月に米球界を目指す選手たちが集まるチーム「アジアンブリーズ」に参加。米国で実戦を通してアピールを続けるつもりだったが、新型コロナウイルスの感染拡大で試合中止が相次ぎ、登板は予定の半分の3試合。ある球団のテストも立ち消えとなり、帰国を余儀なくされた。
夢を追うだけの手応えはある。楽天退団後、サイドスローに転向したが、直球は最速150キロを計測。カットボールも習得した。「良い状態で投げられているのでやめるにやめられない」。福島県伊達市を拠点に無所属で練習を続ける現在は、筋力トレーニング用のメディシンボールの代わりに8・8キロの石を使うなど工夫しながら自分を磨いている。
「まだ投げられる」恩師の言葉を胸に
今もマイナー契約を視野に入れる大リーグ球団などから関心が寄せられており、今後、補充要員としてオファーが来る可能性は十分ある。ただ、確約されたものではない。3月下旬には「どこかの球団関係者に届け!」とメッセージを添えた投球動画をネット交流サービス(SNS)にアップした。
1月から収入が無く、練習の合間を縫ってオンラインや対面での野球指導に取り組む。4月半ばから約1カ月は、利用していたスポーツジムが一時休業した。マイナーリーグの球団が来季から削減されるとの報道もある。逆風は強いが、聖光学院高時代の恩師、斎藤智也監督の「まだ投げられる。可能性があるなら、どんな小さな可能性でも追った方がいい。ボロボロになるまでやったらいいじゃないか」との助言が背中を押してくれている。
東日本大震災で実家が被災した横山は「プロで活躍し、震災のこともどんどん発信していかないといけないと思っていた。(楽天で)何もできなかった悔しさはある」と心中を明かす。だからこそ最後のチャンスに懸ける思いは強い。「もうちょっと諦めない姿を見せられたらいいな」。吉報が届くと信じている。【細谷拓海】