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これから怖い「コロナうつ」にどう備えればいいのか 心療内科専門医に聞く

「コロナうつ」の予防策などについて話すワーカーズクリニック銀座の石澤哲郎院長=2020年4月23日午前11時55分、吉田卓矢撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大が問題となる中、外出自粛や休校、在宅勤務などによって社会環境は大きく変わった。こうした変化と感染に対する不安に、多くの人がストレスを感じ、「コロナうつ」などの言葉も生まれた。私たちは、コロナうつにどう備えたらいいのか。心療内科専門医で、30社以上の産業医も務める「ワーカーズクリニック銀座」の石澤哲郎院長に聞いた。【吉田卓矢/統合デジタル取材センター】

 ――コロナうつになるのは、どういった理由が考えられるのでしょう。

 ◆新型コロナの感染拡大そのものに対する不安に加えて、外出自粛などによる社会環境の変化や経済面での不安などがきっかけと考えられます。これらの不安や社会変化が心身のストレスになって、心のエネルギーが擦り減ると、最終的にうつ病のような症状になってしまいます。コロナうつは正式な病名ではありませんが、今後、新型コロナに起因したうつ症状を訴える人は増えるでしょう。

 ――不安や環境の変化がどのように心に影響を及ぼすのですか。

 ◆まず、人は「分からないこと」「先が見えないもの」に対して、不安を強く感じます。暗闇を怖く感じるのと同じです。新型コロナは、新しい感染症で詳細はまだ分かっていません。8割は軽症や無症状のまま治りますが、重症化する人も一定数おり、どういう形で重症化するのかについても、まだ十分な情報がありません。そのため、広く知られた病気よりも不安は増幅されます。

 また、嫌な話を聞いたら、誰もが不快になります。いわゆる「共感能力」と呼ばれるものですが、テレビやインターネットにあふれている、新型コロナに関するニュースに触れすぎると、ストレスが増してしまいます。自宅療養しているうつ病患者が、テレビで暗いニュースを聞いて、症状を悪化させるケースもあります。

 環境変化も大きなストレス要因となります。例えば、「五月病」と呼ばれるメンタルの不調は、4月に入社、進学、異動などによって環境が大きく変わり、その後、ゴールデンウイークの気が緩んだタイミングで発症します。現在は、多くの人が緊急事態宣言後に在宅勤務となり、休日も外出自粛を求められ、生活リズムが大きく変わりました。職場での同僚との会話や休日の趣味・スポーツなども難しくなり、ストレスを解消する機会が減って、ストレスがたまりやすくなっています。

 五月病も同様ですが、環境変化によるストレス症状はすぐには出ません。当初は気持ちが張り詰めているからです。緊急事態宣言の延長で緊張の糸が切れてしまう人や、宣言終了後に体調を崩す人が、6月以降により顕在化することが懸念されます。

 ――いろいろなストレスは、どのようにしてコロナうつにつながるのでしょうか。

 ◆ストレスとうつ症状などのメンタルの不調の関係は、コップとそこに注ぎ込まれる水で表現されます。コップはその人のストレスへの耐性を、水はストレスの量を表します。普段から誰もが何らかのストレスを抱えています。そこへ、新型コロナに伴う社会不安や環境変化などによるストレスが次々と注ぎ込まれます。コップの大きさや水の量は人によって違いますが、注ぎ込まれ続けると、いずれはコップから水があふれ出るように、怒りや悲しみ、不安などの感情があふれ出します。更に強いストレスがかかると、コップ自体が壊れてストレス耐性が大きく減り、うつ病などになってしまいます。メンタルの不調を予防するには、注ぎ込まれる水の量を減らす▽コップを大きくする▽入った水をくみ出す――といった方法が考えられます。

 ――注ぎ込まれる水(ストレス)を減らすには、どうすればいいでしょうか。

 ◆「知識」と「生活」をキーワードに説明します。知識については、正しい知識を身に付けることと、不確かな知識に惑わされないことが重要です。「正しい知識を身に付ける」ことにより、ストレスに前向きに立ち向かう手段を得ることができます。新型コロナは、徐々に対策や治療方法が明らかになっています。手洗いやうがいをすること、3密を避けることなどの対策によって、感染リスクを下げられます。自分にできる対策を確認し、実践するだけで、気持ちは楽になります。また、重症化する人は一定数いますが、一方で8割は軽症で済みます。若年者は、その割合が更に高くなります。重症化するケースは、しないケースよりもはるかに少ないということも理解しておきましょう。

 また、「不確かな知識に惑わされない」ことも重要です。テレビやインターネットでは、新型コロナ関連の情報が氾濫しています。真偽が不確かなものも散見され、不安を増大させています。正しい情報を見極める必要があります。

 更に、正しい情報でも、不快な情報に触れすぎるのはよくありません。外出自粛により、テレビをつけたまま自宅で過ごす人もいます。最近は、同じ内容の新型コロナ関連ニュースが繰り返し流されています。私は、普段からメンタル不調の患者さんには、ニュース番組は1日に一つ1時間程度見れば十分です、と話しています。それ以外の時間はテレビを切るなどして、新型コロナのことを忘れる時間を作ってください。インターネットも同じです。

 「生活」については、規則正しい生活を送ることが何よりも重要です。不規則な生活に伴う睡眠不足はうつ病の原因となります。家に引きこもって日光を浴びないと、概日リズムと呼ばれる体内時計のリズムが崩れ、日中に頭がぼーっとして、夜も眠りが浅くなります。その結果、睡眠不足となり、うつ病発症につながってしまいます。

 概日リズムを崩さないためには、在宅勤務でも、いつもと同じ時間に起床し、ベランダに出るなどして日光を浴びましょう。朝食を食べ、しっかりと目を覚ましてください。日中も意識して体を動かしましょう。

 また、自宅で過ごす時間が長くなるので、この機会に室内を掃除したり、不要品を整理したりして、居心地を良くし、自宅内でのストレスを減らしましょう。

 ――コップ(ストレス耐性)を大きくするにはどうすればいいですか。

 ◆後ろ向きな考え方を変えられないかチャレンジしてみましょう。社会不安が高まっている状況では、気付かないうちに後ろ向きの考え方になり、必要以上にストレスをためがちです。プラス思考に変えることができれば、不安は軽減されます。

 例えば、「自分や家族が感染して死んでしまうかも」と思っているのであれば、「軽症で済む患者さんもたくさんいる。しっかり予防すれば何とかなる…

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吉田卓矢

1976年生まれ、兵庫県明石市出身。2005年入社。奈良支局、高松支局、大阪科学環境部、福井支局次長、水戸支局を経て、2019年秋から統合デジタル取材センター。原発や震災・防災、科学・医療などを中心に取材してきた。

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