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社説

コロナと資本主義 配分のゆがみ正す機会に

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 新型コロナウイルスの感染拡大で、資本主義のほころびが広がっている。

 現代の資本主義経済は、企業が市場競争を通じて利益を生む仕組みだ。ただ、20世紀後半からグローバル化が進むと、競争が激しくなり、先進国を中心に貧富の差が拡大した。その反動で保護主義的な政策が広がり、米中貿易戦争が世界経済に影を落としていた。

 コロナ禍で、主要国が自国経済の立て直しを優先するばかりでは、グローバル化にあらがう動きが一層強まる可能性がある。

 いくつかの国は既に、食料輸出を制限したり、防護服やマスクを奪い合ったりしている。

 日本では、生産拠点の国内回帰を支援する費用が、政府の補正予算に盛り込まれた。サプライチェーン(供給網)を中国に依存するリスクが、部品調達の停滞やマスクの品薄で顕在化したためだ。

保護主義回避に全力を

 危機管理の観点から、生産拠点を中国以外に分散させることは理解できる。ただ、国内でも地震や風水害のリスクはある。混乱している状況で性急に移転を進めれば、禍根を残しかねない。

 保護主義は経済の効率を悪化させ、国同士の関係にも緊張をもたらす。1930年代の世界恐慌の教訓を忘れてはならない。主要国が互いに国内産業や雇用を守ろうと貿易制限措置を取った結果、世界経済がさらに収縮し、第二次世界大戦につながった。

 その反省から、戦後に自由貿易体制の構築が進んだ。その中核を担う世界貿易機関(WTO)は「歴史は、市場を開くことがすべての人々の助けになることを教えてくれる」と協調を呼びかける。

 主要国は、自由貿易体制の立て直しこそ経済回復の近道であることの認識を共有すべきだ。

 格差の是正も喫緊の課題だ。コロナ禍で経済の停滞が長期化すれば、中小零細企業や非正規雇用の労働者が受ける打撃は大きい。貧困層が増えれば消費が低迷し、経済の基盤が弱まる。

 一方で、人の往来やモノの流通が減り、デジタルの活用がますます進むだろう。巨大IT企業の寡占が強まり、一部の企業や富裕層に富が集中する傾向に拍車がかかりかねない。そうなれば、デジタル化から置き去りにされた企業や人々の「分け前」はさらに減る。

 経営者は、利益の配分について熟考する時だ。コロナ禍でも、医療や小売り、物流が社会を支えている。こうした現場で働く人が安心して暮らせる経済こそ必要だ。中間層が厚みを増せば、社会も安定する。

 米フォード・モーターを創業し、大量生産で資本主義に革新をもたらしたヘンリー・フォードは、1世紀前の著書で「資本の最高の使い方は、利益を増やすことではなく、利益を増やして生活の向上に役立てることだ」と記した。

 投資家には、短期の利益だけでなく、企業の社会的役割などを十分に考慮してもらいたい。

問われる政府の役割

 政府の役割も問われよう。所得の再分配機能や、社会保障などのセーフティーネットが十分かどうかの検証が必要だ。産業構造の変化に対応した人材の育成や、労働市場の構築も急がねばならない。

 確かに今は、政府が前面に出て、企業や家庭を支える局面だ。しかし、国が経済を丸抱えする国家資本主義の様相を強めれば、副作用も大きい。

 リーマン・ショック後の世界は、政府・中央銀行の金融緩和や財政出動への依存を強め、金余りが次のバブルを生み出しかねない危うさを抱えていた。現に中国は、巨額の財政出動でいち早く景気回復を成し遂げたが、過剰投資を招いて結果的に成長を鈍化させた。

 過剰な政策で無理やり底上げするような経済は、持続可能とは言えない。国の借金が臨界点を超えれば、長期金利が上昇して経済を動揺させる。

 一方で政府は、国境を超えて活動する巨大IT企業に対しては、課税も十分にできない状態だ。グローバル資本は、データの使い方や資金の取引に関する政府の介入を嫌いつつ、政府の資金に頼って市場を安定化させている。公正さを欠いているのではないか。

 世界経済は、感染症だけでなく、地震や異常気象など多くの不確実性に囲まれている。政府や企業は資本主義のゆがみを正し、経済の持続性を高める方向にかじを切る必要がある。

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