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社説

コロナと格差社会 等しく命守る共感の力を

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 東京の池袋駅周辺は、すっかり生まれ変わろうとしている。

 かつて、駅の西口公園は雑然とした雰囲気があった。不良少年たちがたむろし、作家・石田衣良さんの小説「池袋ウエストゲートパーク」の舞台になる。路上生活者も多かった。

 昨秋、「劇場公園」として整備され、大型スクリーンやステージが備わった。深夜から早朝まで人の立ち入りを禁じる看板が立ち、路上生活者は閉め出された。

 東京オリンピック・パラリンピックの開催決定を機に、都内各地で再開発が急速に進む中、都心のあちこちで起きている現象である。「見せたくない」「見たくない」ものを排除する空気が広がってしまった。

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、五輪も延期された。目を背けてきた社会のひずみが今、再びあらわになりつつある。弱い立場の人にしわ寄せが及び、職や住まいを失う「格差社会」の顕在化だ。

弱い立場へのしわ寄せ

 2008年の大みそかの光景がよみがえる。リーマン・ショックの影響で仕事を奪われた派遣労働者らに、寝泊まりする場所や食事を提供するため、労働組合や支援団体が東京の日比谷公園に「年越し派遣村」を設けた。路頭に迷った大勢の人が押し寄せ、「派遣切り」は深刻な社会問題になる。

 だが、景気の回復後、低賃金で不安定な非正規雇用に頼る企業の姿勢が抜本的に見直されることはなかった。

 非正規雇用はさらに増え続け、19年時点で約2165万人に達した。08年当時より400万人以上も多く、労働者全体の4割近くを占める。

 リーマン不況時に失業者があふれた池袋では、NPO法人「TENOHASI(てのはし)」が今も路上生活者らのアパートへの入居支援や炊き出しをしている。感染予防に注意を払いながら、200人を超える人に食事を配る。

 支援が必要な人の中には、インターネットカフェや深夜営業のファミリーレストランを行き来して日々をしのいできた日雇いやアルバイトの労働者もいる。

 感染拡大で仕事が激減した。ネットカフェなども営業を自粛している。行き場がなくなる人は一層増えるとみられている。

 こうした厳しい生活で健康を害し、免疫力が下がっている人も多い。だが、感染から身を守る手立ては乏しい。東京や大阪のNPOが手持ちのマスクを配布しているが、十分ではない。

 TENOHASI代表理事の清野賢司さん(58)は「炊き出しに来る人は確実に増え続けている。情報がなく、どこへ相談に行けばいいか知らない人も多い」と指摘する。政府や自治体はNPOと協力し、情報提供を含めた支援を尽くすべきだ。

市民の支えが不可欠だ

 非正規雇用の人の中には子育て世代もいる。失業したり収入が大幅に減ったりすれば、子どもの貧困に拍車がかかるのは明白だ。

 子ども7人のうち1人が貧困状態にある。ひとり親家庭は半数が貧困といわれる。貯蓄も少なく、休校で給食がなくなって食費がかさむ。生活は追い詰められ、子どもの健康も損なわれかねない。

 子どもの貧困問題についても、国は本格的な対策を講じてこなかった。早急に十分な児童手当を給付することが必要ではないか。

 一方で感染予防のため閉鎖せざるを得ない子ども食堂で、代わりに手作り弁当を提供する所が増えている。人は感染から自身を守ろうと他者を排斥しがちだが、そうした中でも弱い立場の人を支える動きが広がるのは心強い。

 失業者への炊き出しを続けるNPOをはじめ、民間の地道な活動が、ぎりぎりのセーフティーネットになっている。

 近年、グローバル化によって世界各国で格差が広がった。日本でも、8年目に入った安倍政権下で富裕層は増えたが、中間層が痩せ細った。

 社会のひずみが大きくなる中でのコロナ禍は国民生活に重くのしかかり、感染拡大防止に取り組む一体感を維持するのも難しくなっている。格差社会を根本から見直すべき時期だ。

 貧富の格差を健康や命の格差につなげてはならない。誰もが同じ社会の一員であるという共感を広げることが必要だ。それこそが、コロナ収束後の社会像を描くことにつながる。

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