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コロナ禍の中でこそ読みたい本

「女性たちの『声なき声』を聞く力を養う」3冊 作家・北原みのりさん

エリカ・ダイアン・ラパポート著、佐藤繭香・成田芙美・菅靖子監訳「お買い物は楽しむため 近現代イギリスの消費文化とジェンダー」=彩流社提供

 「ステイホーム」で増大する育児や家事の負担を担うのも、介護や医療現場のケアワークを担うのも主に女性だ。それでも、個人に支給されるはずの給付金は、多くは男性である世帯主にまとめて振り込まれる。政治家の女性蔑視的な言動も後を絶たない。こんな日本社会を考えるのにおすすめの本を、作家の北原みのりさんに挙げてもらった。北原さんは「今こそ本から知恵や歴史を学び、現実を見つめ直して」と話す。【構成・藤沢美由紀/統合デジタル取材センター】

 世界各国がコロナ禍に直面している今、日本と他国との違いが見えやすくなっています。1人10万円の給付金が世帯主にまとめて支給されることに象徴されるように、政治に生活者が見えていない。政策が決まるスピードも遅い。そこからあぶり出されるのは、日本に女性のリーダーが圧倒的に少ないことだと思います。コロナ終息後に社会をよりよくするため、今は女性たちの「声なき声」を聞く力を養って、語るべきことを考える時間になればと考えています。

 先日、スーパーが混んでいる問題に関連し、松井一郎大阪市長が「(女性は)買い物に時間がかかる」という趣旨の発言をしました。この手の偏見が昔からあることがわかる本を1冊目に紹介します。

 「お買い物は楽しむため 近現代イギリスの消費文化とジェンダー」(エリカ・ダイアン・ラパポート著、佐藤繭香・成田芙美・菅靖子監訳、彩流社)です。この本には、同じような発言を19世紀の英国の男性もしていたことが書かれています。そして、財産も持てず家にいるばかりだった当時の英国の女性たちが、どのように買い物を楽しむようになったのか、消費行動や文化をジェンダーの視点から明らかにしています。

 私が経営する「ラブピースクラブ」は百貨店にも出店しています。百貨店は販売員も客も女性が多い世界です。自分のために商品を選び、買うというのは、人としての尊厳を保つ力のある行為だと感じています。

 19世紀の英国といえば女性が参政権を求めて闘った運動が有名ですが、彼女たちは商店のガラスに投石したりします。消費する女性をもっと大切にせよというメッセージなんですね。彼女たちは女性用の公衆トイレを作ることも求めて闘いました。買い物で外出するようになったからです。この本は、フェミニズムと消費との深い関わりなどを幅広く学ぶことができます。

 韓国在住の友人に話を聞くと、マスクは普通に売られているし、1日の感染者数も少ない人数で推移しているといいます。韓国の康京和外相は「徹底した検査によって感染拡大を抑え、事実を明らかにすることで不安を取り除く」という趣旨のスピーチをしました。日本では検査の数が少ないために、どこか疑いながら感染者数を見ている人が多い。給付金の額や制度が変わった過程も不透明で、人々は事実が明らかにならないことにすっかり慣れています。

 コロナへの対応で日韓の違いを突きつけられている今、韓国から学べることがあると思い、選んだのが、漫画と文学を組み合わせた「グラフィッ…

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藤沢美由紀

2007年入社。山口支局、熊谷支局、八王子支局、東京本社社会部、医療福祉部(現くらし医療部)を経て2020年春から統合デジタル取材センター。LGBTなど性的少数者に関わる教育、医療、職場、法、家族などの問題を中心に取材。当事者団体と有志記者による「LGBT報道ガイドライン」作成に参加。

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