友禅は図案に始まり、下図、下絵、糊置(のりおき)(模様の線を糊でなぞってマスキングし、白い線に抜くための工程)、色挿(いろさし)など複雑な工程を必要とし、かつては専門職人による分業で制作された。しかし20世紀になると、自ら図案を考え、糊を置き、色を挿す山田貢(みつぎ)のような「実材表現」の作家が現れる。背景の一つには職人不足などの状況もあった。だが、主要な技術を一人で習得するには時間もかかる。にもかかわらず、友禅が衰退し、無くなるということはなく、意欲ある作家たちは自身で図案を考え、染める一貫制作に積極的に取り組んだ。
彼らは自らの図案を染色作品にしていく過程で、素材や技術からヒントを得、作りながら調整するといった、自分で実材を扱う長所を獲得した。例えば下図の段階で数通り検討した後、白生地に写す工程でさらに調整し、また糊で線をたどる際にも、ここはもっと密に、この線はもっと長く、など最後まで作家自身の手と眼(め)で判断し、創意を隅々まで反映させるようになったのである。結果、いわゆる量産的な産業友禅は減っても、作家…
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