NHKのあり方について検討する総務省の有識者会議が始まった。最大の焦点となるのが受信料制度の見直しだ。
テレビ放送は開始から70年近くたち、インターネットの発達で曲がり角に立っている。
視聴時間は若者を中心に減り、スマートフォンやタブレットでの動画配信に人気が集まる。
NHKも今春から番組をネット上に同時に配信する「NHKプラス」を始めた。
国内の全世帯数は2023年をピークに減少に転じる見込みだ。テレビを持つ世帯も減っている。
かつてはお茶の間のだんらんの中心にテレビがあったが、存在感は相対的に低下しつつある。
公共放送が将来も安定的に運営されるよう、時代に即して受信料制度を見直すのは当然だ。
諸外国の公共放送の例も参考にするという。テレビの有無にかかわらず全世帯が負担する方式や、テレビを持たないネット配信のみの利用者からも徴収する案などが検討されるとみられる。
不払い世帯は現在、約2割に及ぶ。どのような形にせよ、受信料制度を維持するには、国民や視聴者の理解が欠かせない。
まずはNHKの役割や業務を問い直し、企業統治を再構築する必要がある。
NHKは年間7000億円超の潤沢な受信料収入を背景に、予算をかけて番組を制作している。
膨大な経費を投じたネット配信業務や、超高精細の4K・8Kチャンネルの増設で、肥大化や民業圧迫が懸念される。
何より必要なのは、公正中立な報道姿勢だ。それが確保されない限り、視聴者の信頼は得られず、受信料の議論もできない。
かんぽ生命保険の不正を追及した番組について、NHKの最高意思決定機関である経営委員会が当時の会長を厳重注意した。放送法が禁止する個別番組への介入とも取られかねない深刻な事態だ。
公共放送が災害時や、今回のコロナ禍のような緊急事態に社会インフラとして果たす役割は小さくない。良質のドキュメンタリーは多くが評価するところだ。
望ましい受信料の形は、あるべき公共放送の姿を追求する取り組みの中で検討されるべきだ。