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武田 砂鉄・評『ただ波に乗る Just Surf』水野英莉・著
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ハラスメントや差別が波の上を漂っている
◆『ただ波に乗る Just Surf』水野英莉・著(晃洋書房/税別2400円)
自分に一切かかわりのない世界に対し、偏見で埋め尽くしてしまうことって誰にもあるはず。自分にとって「サーファー」がそうだった。人付き合いが柔軟、仲間を大切にする、だが、マッチョで女性への人権意識が低い。「いい波が来た」と言いながら、自然に感謝したりしている。
この偏見がどうやって培われたかといえば、ドラマや映画、ドキュメンタリーなどで見かけた光景の集積だ。ただそれは、あくまでも身勝手に、記号的に処理しただけだ。実際はどうか。自身もサーファーである研究者が、女性の立場からサーフィンという身体文化を考察した一冊。やはり、軸となるのは「波の上がいかに『男たち』のものであるか」である。 着替えやお手洗いの問題、いわゆる「女性のみだしなみ」と対立せざるをえない…
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