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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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凡人も賢者も1人1票の平等を分かちあう民主政治は…

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 凡人(ぼんじん)も賢者も1人1票の平等を分かちあう民主政治は、自分の利益について一番よく知っているのは自分だとの原理に根ざしていよう。だが誰しも日ごろはその利益とは何かを考え詰めているわけでない▲コロナ禍により日常を断ち切られ、仕事や公の立場から距離をとった巣ごもりを強いられる方の多かろう今日である。しかしそんな緊急事態下に、個々の暮らしの場に腰をすえてこそ見えてくる自分の利益や社会のありようもあろう▲発端は8日に投稿された「1人でツイッターデモ#検察庁法改正案に抗議します」とのツイートだった。「犯罪が正しく裁かれない国で生きていきたくありません。この法律が通ったら……刑事ドラマも法廷ドラマも成立しません」▲ネットニュースサイト・ねとらぼによれば、10日には1日400万件近い関連投稿があり、芸能人ら著名人のツイートも相次いだ。かつて注目を集めたツイッターによる社会運動では1年で35万件だったからまさに爆発的反響である▲不正投稿による水増しもあろうが、調査では不正は5%程度という。改正案反対論はこの法改正が政権による検察への政治介入の道を開くという。加えてコロナ禍の混乱に便乗するかのような法改正強行が不信の爆発を呼び起こした▲すべての人の行動の公共的意味が問われ、個々の暮らしの空間から社会の約束事を見つめ直すことになった緊急事態下だ。今は権力分立という契約の不履行に異議を突きつけた「巣ごもりデモクラシー」である。

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