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兵庫の中国残留邦人向け介護施設、利用自粛で苦境 国の給付金も対象外

昼過ぎに利用者が帰り、誰もいなくなった「三和之家」にたたずむ田山華栄さん=兵庫県尼崎市で2020年5月12日午後4時42分、井上元宏撮影

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 高齢化する中国残留邦人らを支えようと、日本国籍を取得した田山華栄さん(61)=兵庫県尼崎市=が1月に開設したばかりの通所介護施設「三和之家」(同市神田北通6)が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦境に陥っている。利用自粛で赤字が続くが、前年の売り上げが要件となる国の持続化給付金は対象外。苦難に耐え続けた残留邦人が老老介護する姿や1人暮らしの様子を見てきた田山さんは「共に生きる施設は絶対に必要」と運営資金の確保に奔走している。

 5月中旬のある日の午後3時過ぎ、その日2人だけだった利用者を送り出すと、田山さんは事務室でパソコンに向かった。「当てはまる支援制度を探して、連休中もずっとインターネットとにらめっこしていた」。先天性脊髄(せきずい)障害がある小さな体を乗り出してマウスに手を伸ばした。

 中国・北京市の福祉部局に勤めていた田山さんは、訪日中に知り合った日本人の前夫と結婚して1992年に来日。尼崎市で在日中国人の障害児らが通う作業所を始めた。市内にある残留邦人向けの日本語教室とも交流する中で、中国で育ったお年寄りが言葉の壁や生活習慣の違いもあり、日本での介護になじめない人がいると知った。自身も亡くなるまで前夫を長年介護した経験があり、「少しでも役に立ちたい」と通所介護施設開設を思い立った。

 2020年1月、阪神尼崎駅近くの三和本通商店街の美容室を改装してオープン。職員6人のうち半数は残留邦人2、3世で、田山さんを含め4人が中国語が話せる。施設では、カラオケで中国の懐メロを歌い、ダンスを踊る。水ギョーザやシャンピン(中国風おやき)など中国風の昼食を1食200円と格安で提供した。1日15人の利用が採算ラインで、当初は残留邦人や在日中国人のお年寄り6人の利用登録でスタートした。

 「戦後、日本人だと周囲にばれて6軒の家をたらい回しにされた」「日中国交正常化(72年)で初めて養父母から自分が日本人と知らされた」……。利用者の昔話に耳を傾けると、多くが戦争に翻弄(ほんろう)された人生を送っていた。ようやく戻った故国では「中国人」と言われ、「一体、私はどこの国の人ですか」と問いかけた人も。「人生の最後は楽しんでほしい」。田山さんは願ってやまない。

 だが、中国本土での新型コロナ感染拡大が伝わると事態は暗転。感染を恐れて2月半ばには3人が利用を控えた。さらに、4月の緊急事態宣言を受け、兵庫県が、家族などから介護を受けられる高齢者にデイサービスの利用自粛を要請した。そのため5月に入っても1日当たりの利用は1、2人しかいないという。

 月約10万円の介護報酬では、月額約30万円の家賃も賄えない。さらに職員の人件費に、改装費で借りた1600万円の返済がのしかかる。休業も考えたが、休業手当の最大9割が助成される雇用調整助成金や、国が新設した持続化給付金も前年の売り上げ実績が必要で該当しなかった。

 開業のために準備してきた資金も底をつき始めたが、経営者として職員を路頭に迷わせるわけにはいかない。家にこもりきりになった認知症の利用者も心配だ。さまざまな国の高齢者がふれあう施設にと夢を描く田山さんは「できることは全てする」とあきらめていない。【井上元宏】

中国残留邦人

 国策により、旧満州(現・中国東北部)に移り住み、終戦前後の混乱で肉親と離れて中国に残された人たち。1972年の日中国交正常化を受けて調査が始まり、身元が判明した人らが帰国した。厚生労働省によると、今年4月末で永住帰国した残留邦人は6724人(家族を含むと2万911人)。2015年の調査でも平均年齢が76歳と高齢化が進んでいる。

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