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「コロナの先」へ、教員結ぶ SNSに情報ページ 岡本仁宏・関西学院大教授=中川悠 /大阪

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ビデオ会議システム「ズーム」で取材に応じる岡本教授 拡大
ビデオ会議システム「ズーム」で取材に応じる岡本教授

 「学生たちの通信環境がバラバラで平等性を守れない」「1年生は友達も作れず、孤独の中にいる」――。大学の教職員から寄せられた声だ。

 コロナウイルス感染防止の観点から、全国の多くの大学が緊急事態宣言の期間は入構禁止とし、平時に戻るまでの道筋は、いまだ不透明だ。それでも、自宅で自粛を続けている学生の教育を進めるべく、教職員たちは苦戦を強いられながらもオンラインでの講義を準備している。5月の連休が明けて講義をスタートさせた大学が多く、まさに今、誰もが経験したことがない新しい時代の幕が開きつつある。

 情勢が日々刻々と変化する中、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の「フェイスブック」で3月末から大学の教職員らが情報交換をする場を立ち上げた人がいる。関西学院大学法学部の岡本仁宏(まさひろ)教授(65)だ。情報交換ページの名称は「新型コロナ休講で、大学教員は何をすべきかについて知恵と情報を共有するグループ」。開始から1カ月ほどで、全国から約1万8600人が参加し、共有された情報やコメント数は7万を超えた。

情報共有のため岡本教授が始めたフェイスブックのページ 拡大
情報共有のため岡本教授が始めたフェイスブックのページ

 グループ名である「大学教員は何をするべきか」に込めた思い。それはつまり「大学は今、何をするべきか」ということ。オンラインで取材に応じた岡本教授は「全国の大学がこんなにも混乱し、必死になって情報を求めているということに驚きました」と話す。

 大学が抱える問題点の多様性も見えてきた。学生については、一人一人の通信環境の違い、所得差、視覚・聴覚障がいなどへの対応、留学生への多言語での情報提供、実習や研究の受け入れ先など。教員については、大学内の通信インフラの差、セキュリティーの問題、常勤講師と非常勤講師の待遇の格差など。

 グループの開設から投稿や相談が一気に増え、話題が広がる中で、岡本教授はグループを運営するための仲間を募った。今では20人の思いのあるボランティアが、オンライン上の広場が参加者にとって有益なものとなるように支えている。

 ほとんどの教職員も学生もオンライン講義は全員初めて。問題も多種多様。だが、岡本教授は「できれば前向きなことを発信したい」と笑顔で話す。「これからの時代は、『知の拠点』だった大学から『知の結節点』としての大学に変わると考えているんですよ」

 例えば、教室の中だけで発信してきた講義は、子どもたちや社会人も視聴できるようになるかもしれない。エール、ハーバードなど世界中の大学講義とつながれるかもしれない。今まで閉じられてきた大学は、外部と連携して多くの学びを広く発信できるように変わっていく可能性があるのだ。

 「日本の大学はまだまだ捨てたもんじゃない」。教職員たちは学生のことを念頭に置き、真剣だ。岡本教授はそのポジティブな姿勢に何度も感動したという。そして、彼が見ている未来の景色は前向きで明るい。大学だけでなく、教育機関全てが取り組む新たな取り組み。未来へのチャレンジが始まろうとしている。


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

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