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余録

「春のさきぶれ」といえば何か聞こえが良いが…

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 「春のさきぶれ」といえば何か聞こえが良いが、実は途方もない惨事の予兆のことである。1918年4月、台湾巡業中の尾(お)車(ぐるま)部屋の真砂石(まさごいわ)ら3人の力士が謎の感染症により急死したのが、その発端だった▲翌月の東京の夏場所は高熱などによる全休力士が相次いだ。世間はこれを「相撲風邪」「力士風邪」と呼んだが、実はこの謎の感染症こそが同年初めから米国で流行の始まった「スペイン風邪」とみられている。起源は中国説もある▲スペイン風邪の本格流行は同年秋からで、日本でも死者39万人を数えた。相撲風邪が春のさきぶれとされるゆえんだが、本流行で力士の感染が少なかったのは免疫のおかげだったのか。以前の小欄でも触れた感染症と相撲との因縁だ▲新型コロナウイルスに感染していた高田川(たかだがわ)部屋の三段目力士・勝武士(しょうぶし)(本名・末武清孝(すえたけ・きよたか)さん)が亡くなった。28歳の若さで、コロナによる20代以下の死亡例は国内初となる。重症化リスクのある糖尿病の持病があったとも伝えられる▲部屋での暮らしを共にし、糖尿病や高血圧が職業病視される相撲界である。この感染症の怖さ、むごさを改めて思い知らせた若い力士の無念の死だった。相撲協会は希望者全員に対し、コロナの感染歴を調べる抗体検査を行うという▲この検査で相撲界のコロナへの免疫のほどが分かるだろうか。おりしも緊急事態宣言が39県で解除となったが、「次」の流行の波への警戒や対策も決して怠ってはならないというのが1世紀前の教訓である。

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