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論点

検察幹部の定年延長

 

 政府の裁量で検察幹部の定年を延長できる検察庁法改正案をめぐり、国会の論戦がヤマ場を迎えている。時に最高権力者の逮捕も辞さないなど「政治権力」とは緊張関係を築き、それが国民の信頼の基盤となっている検察庁。それだけに、改正案は「検察の独立」を揺るがしかねないという反対論は根強い。どこが問題なのか。

 今回の検察庁法改正案の最大の問題は、検察官の定年を引き上げることではなく、時の政権の判断で、検察首脳の定年や役職定年を引き延ばすことができてしまう点だ。これは検察を「政治検察」にする暴挙だ。旧ソ連の独裁者スターリンすら想起する。

 理由は後述するとして、まずおさらいしておく。現在の検察庁法22条にある「検事総長は65歳、その他の検察官は63歳で退官する」という規定は、1947年にこの法律ができた時からあった。

 こんな法律はほかにない。一般の国家公務員には81年の国家公務員法改正まで定年はなかったし、首相や国会議員に定年があれば、みんな怒るだろう。

 なぜ検察官だけか。強い捜査権限があり、人を裁判にかける公訴権を持つ唯一の存在だからだ。

 それゆえ検察庁法は4条で検察官を「公益の代表者」とし、そのような強大な存在が職に居座り続けないように定年を設け、自動的に退職するようにしたのだ。

 ところが改正法案を読むととんでもないことが書いてある。定年を一律65歳に引き上げ、最高検の次長検事、高検検事長、地検検事正には63歳で役職を去る「役職定年」の規定が新たに設けられた。

 問題はここからだ。これらをすべてひっくり返すように、22条2項などで、検事総長ら検察首脳は、内閣が「必要」と認めれば、その役職にとどまったまま、役職定年はもちろん、65歳の定年後もその職に居座れる「定年延長」規定を加えようとしているのだ。

 役人は定年までの持ち時間と少ない首脳ポストをにらみつつ、出世競争をしている。検察官も同じだ。定年が迫り、本来は就けない首脳ポストでも、時の政権が定年延長を認めれば就任できるとなれば、その検察官は政権の顔色を一切気にせず、政権の疑惑を捜査できるか。

 内閣は検察を直接指揮できないなどという擁護論もあるが、誤りだ。実際、54年の造船疑獄で、時の吉田茂政権の犬養健法相は、検察庁法14条に基づき、検事総長を通じて検察捜査に介入し(指揮権発動)、自由党(自民党の前身)幹事長だった安倍晋三首相の大叔父・佐藤栄作氏の逮捕を中止させた。

 その前例を考えれば、時の内閣が、検察官の定年延長を判断し、首脳ポスト就任への道を閉ざす、あるいは開くことができる今回の法改正が意味する重大性が分かるだろう。「恒常的な指揮権発動」の状態が生まれるのだ。

 それだけではない。スターリンは…

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