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ぶんかのミカタ

本を開いて遠い世界へ/上 どこか外へとむかう「窓」=三砂慶明

(C)Takashi HAMASAKI

 人跡未踏の秘境の地から、最新のカメラでさえ撮影できない人間の意識の最深部まで、人間が言葉にしてきた世界はいつも本の中に描かれてきました。いま、物理的に遠い世界に旅立つことは難しくなりましたが、部屋の中から近くて遠い世界の扉を開いてくれる本を紹介します。

 ページをめくると、見上げた空の広さに圧倒されて、実際に海の音が聞こえてくるようなエッセーがあります。『海からの贈物』(新潮文庫)です。著者のアン・モロウ・リンドバーグは、女性飛行家の草分けとしても有名ですが、本書には、彼女が家族と離れてただ一人浜辺を歩き、自分の心に聞こえてきた言葉を綴(つづ)っています。この本を読んで気づかされるのは、私たちは旅に出て自分を取り戻すのではなく、テレビやSNSの絶え間ないおしゃべりを離れて、自分一人だけの時間、孤独と向き合ったときにはじめて自分の本当の姿が浮かび上がるという事実です。何マイルも続く海で囲まれ、本土と繋(つな)ぐ橋もなく、電信も電話もなく、都会の喧騒(けんそう)からも世間からも切り離された島を、著者と一緒に歩いてみてください。

 料理家、細川亜衣さんのレシピ集『果実』(リトルモア)を開けば、普段手に取り、味わってきた果物のイメージが一変します。果実は「幸福のしるし」。生まれてきた娘のために庭にたくさんの果樹を植え、丹精込めて育てたその実で料理をし、ジャムを煮てお菓子を焼く。著者の料理は、まるで食卓の宝石です。何より「トマトと赤いベリーのスープ」や「やりいかのパッションフルーツソース」などのレシピは、「果実はデザート」とい…

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