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加藤陽子の近代史の扉

自己の揺るぎない評価軸 天賦人権論への確信こそ

 新型ウイルスの宿主であるヒトがまず街角から消え、ガンジスの水は澄み、公園の新緑も輝きを増した。だが国境で画された社会に生きる人の心は、不安と悩ましさで一杯になっている。

 3月末、非常事態宣言が東京で出されるとのうわさが駆け巡った頃、ニューヨークの惨状が2週間後の東京だとする言説も現れた。韓国のPCR(遺伝子)検査数や台湾のITを駆使したマスク供給術を称(たた)え、日本の国力衰退を嘆く話法も定番となった。このような見方に対し、韓国や台湾との制度(徴兵制や住民登録証)的差異を確認しつつ、人口10万人当たりの死者数が極めて低く抑えられている日本の現状を指摘するのは、強い精神力を必要とする。不安と理性の間で考えを巡らせば、神なき国の近代化を進めた日本、そこに住む人々は、自国や自国民に対する確固とした評価軸を持たずに来てしまったのではないかとの疑念にたどり着く。ならば、揺るぎない自らの評価軸を手に入れるにはどうすればよいのだろうか。

 答えは二つある。その一つは歴史が教えてくれそうだ。太平洋戦争の最終盤にあっても優れた観察眼を失わなかった外交評論家の清沢洌(きよし)。1945(昭和20)年元日、清沢は日記にこう記した。「日本で最大の不自由は、国際問題において、対手(あいて)の立場を説明することができない一事だ。日本には自分の立場しかない」。他者を公正に見ない社会では、自らの立ち位置もまた見えなくなる。究極の他者たる敵国の行動を…

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