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今週の本棚・なつかしい一冊

河瀬直美・選 『ムーミン谷の彗星』=トーベ・ヤンソン文・絵、下村隆一・訳

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寄藤文平・絵
寄藤文平・絵

 (講談社・1650円)

 懐かしい「一冊」ではないのだが、懐かしい「いきもの」ムーミンが登場する作品である。作者のトーベ・ヤンソンさんはフィンランドの芸術一家に生まれた。幼い頃から物語を考えるのが大好きで、学校の行き帰りにそういった時間を費やしていたそうだ。私自身、ムーミンとの出会いはテレビ漫画である。おかしな「いきもの」たちがそれぞれの生き方を尊重しながら、関係を結んでゆく物語は幼い私には、不思議すぎて夢の中を旅しているようだった。今、改めてトーベ・ヤンソンという作家の中に宿っていた「人間とは」という問いかけに向き合ってみる。

 ムーミン全集[新版]全九巻中、一番はじめの「ムーミン谷の彗星(すいせい)」という作品にはムーミンのパパやママも登場するし、お馴染(なじ)みのスナフキンという放浪の旅を続けている自由と孤独を愛する人物も登場する。このスナフキンが作中「なんでも自分のものにして、持って帰ろうとすると、むずかしくなっちゃうんだよ」と囁(ささや)く。それは、ムーミンの友達のスニフがとても美しく赤い宝石を見つけて持てるだけ…

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