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東京へ ともに歩む

毎日新聞

ソフトバンクに勤務するパラテコンドーの太田渉子。テレワーク中は主に社業に取り組み、社内報の作成を行っているという=岩壁峻撮影

Passion

「今だからこそ会社の役に」 パラテコンドー・太田渉子が描くデュアルキャリア

 東京パラリンピックで新競技として採用されるテコンドー。女子58キロ超級の代表に内定した太田渉子は、通信大手ソフトバンク社員の顔を持つ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で練習は制約され、テレワークが続くが「会社も大変な時期なので少しでも役に立ちたい」。かつてスキーで冬季パラリンピックに3回出場した30歳は、仕事と競技を両立させる「デュアルキャリア」に挑む。【岩壁峻】

 自宅でパソコンに向かいながら、時間を見つけてウエートトレーニングや蹴りの動作を確認する日々を送っている。コミュニケーション課に所属する太田は、社内報の作成を担当している。黙々と作業を進め、「業務に専念することで仕事の幅を広げられる機会になっている」と、外出自粛が続く現状をプラスに受け止めている。

バンクーバー冬季パラリンピックのノルディックスキー距離女子スプリントで2位に入り、感情を爆発させる太田渉子=ウィスラー・パラリンピック公園で2010年3月21日、長谷川直亮撮影

 生まれつき左手の指がない太田は、冬季パラリンピックの申し子だった。16歳で初出場した2006年トリノ大会のバイアスロン女子立位で銅メダル、10年バンクーバー大会では距離女子スプリントで銀メダルを獲得。若くして世界トップレベルで戦う一方、仕事と競技の両立にも意欲的で、バンクーバー大会後にはソフトウエア開発企業に入社した。冬季競技は14年ソチ大会限りで引退し、18年にテコンドーに本格転向したのを機に、ソフトバンクへ転職した。

 テレワークに切り替わるまでは週5日、午前9時から午後5時までフルタイムで働き、夜は道場に通う生活だった。「大変だけど『充実している』という気持ちの方が大きい。働くことで知見が広がるし、競技以外の時間を持つことが大切だと思っている」と、事もなげに言う。

自身関与のオンラインサービス 学校に提供「誇らしい」

 一方、コロナ禍で出社できない現状にあっても、やりがいを感じている。自身が普及に携わったオンラインのスポーツ遠隔指導サービスが、休校が続く学校現場に無償提供されていることを知った。「仕事をしていて誇りに感じるし、幅広く利用してくれたらうれしい」

 東京パラリンピックは1年延期となったが、代表内定は維持されることになった。会社も太田を後押しする。もともと「太田さんがスキルアップするような職場にしなければならない」(コミュニケーション課)という姿勢で、延期を受けても改めて競技活動を支援していくことを太田に伝えたという。19年世界選手権では銅メダルに輝くなど、本格転向から1年余りで長足の進歩を遂げた。「気持ちは2021年に切り替わっている」。今は会社員としての立場に比重を置きながら事態の好転を信じ、東京での表彰台を狙っている。

おおた・しょうこ

2019年の全日本選手権で優勝し、笑顔を見せる太田渉子。道着に付けられたソフトバンクのマスコットキャラクター「お父さん犬」は、太田のために特別にデザインされた=千葉市中央区の千葉ポートアリーナで2019年2月16日、宮間俊樹撮影

 1989年生まれ、山形県尾花沢市出身。小学3年生から本格的にスキーを始め、冬季パラリンピックには2006年トリノ大会から14年ソチ大会まで3大会連続出場。ソチ大会では日本選手団の旗手を務めた。15年、関係者の紹介をきっかけにパラテコンドーに打ち込むようになった。最新の世界ランキングは8位。

岩壁峻

毎日新聞東京本社運動部。1986年、神奈川県生まれ。2009年入社。宇都宮支局、東京運動部、北陸総局(石川県)を経て、2019年10月から東京運動部。現在は主にパラスポーツを担当。2016年リオデジャネイロ・パラリンピックは現地取材した。中学~高校(2年まで)はバレーボール部。身長が低かったため、中学の顧問には「スパイクは打つな」と言われて育つ。