毎日新聞
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赤ちゃんが頭を強く揺さぶられることで脳に障害が残る「乳幼児揺さぶられ症候群」(SBS)を巡る虐待事件で、無罪判決が相次いでいる。2018年以降、少なくとも6件に上る。
大阪高裁は昨年10月、孫に暴行を加え死亡させたとして傷害致死罪に問われた祖母について、揺さぶりではなく病気が原因の可能性があるとして無罪を言い渡した。
SBSは急性硬膜下血腫と眼底出血、脳浮腫が特徴だ。この3症状があれば、頭を揺さぶるなどの虐待が疑われた。だが最近の研究では低い位置から落ちた場合など、揺さぶり以外でも起きる可能性があることが指摘されている。
しかし、厚生労働省が13年にまとめた「子ども虐待対応の手引き」は、「家庭内の低いところからの転落や転倒によっては、乳幼児に致死的な脳損傷は起きないとされている」と記述する。
手引の対象は主に自治体と児童相談所だが、虐待対応で連携する警察も参考にする。立件の判断にも影響を与えかねない。そうである以上、内容を訂正し、揺さぶり以外でも脳に障害が残る可能性を書き込むべきだ。
大阪高裁の判決では、激しい揺さぶり行為が祖母の年齢、体力から考えて「相当不自然」と指摘された。障害と揺さぶりをつなぐ考え方は「単純に適用すると、事実誤認の恐れが生じかねない」と警鐘を鳴らした。
乳幼児に対し、密室で行われた虐待行為を立証するのは難しい。捜査当局は子どもの家庭環境や日常生活などを総合的に判断し、事実解明をしなければならない。
もちろん、揺さぶりが障害を引き起こし、虐待となったケースは少なくない。
18年度に児相が対応した児童虐待の相談件数は過去最多を更新した。虐待を見逃さず、疑いがある場合は子どもを保護しなければならない。
厚労省は今年度、SBSの疑いがある事例について調査する。揺さぶりと虐待がどの程度、関係があるのか実態を解明すべきだ。小児科医や脳神経外科医など、専門家の意見も参考になるだろう。
調査結果を児相の対応に生かし、虐待だけでなく冤罪(えんざい)の防止にもつなげるべきだ。
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