新型コロナウイルスが猛威を振るう世界の今後を「知の巨匠」たちはどう見ているのか。初回は、米国の国際政治学者・イアン・ブレマー氏に「リーダーなき『Gゼロ』」の国際社会で起こりうることを語ってもらった。
世界は第二次世界大戦後で最悪の危機に直面している。何よりも新型コロナによる経済的な打撃が大きすぎる。(危機が始まってからの)6週間で米国人労働者の実に2割が失業保険を申請した。たった6週間で、だ。こんなことは前例がない。これと同じようなことが世界中で起きている。
にもかかわらず、誰もリーダーシップをとろうとしない。米国は、中国や世界保健機関(WHO)を非難するのに躍起だ。欧州連合(EU)は国際的にワクチン開発を支援するための会議を開いたが、米国は参加を拒んだ。医療品や医薬品のサプライチェーン(供給網)は分断され、世界中で囲い込みが起きている。パンデミック(世界的大流行)を克服するためにどの国も一致した行動をとろうとせず、むしろ争っている。これがリーダーなき「Gゼロ」の世界で起きていることだ。米国が国際秩序を主導していた時と違い、リーダー不在の時代は過去のどんな時よりも世界を危険にさらしている。
この10年間、経済格差は広がっていたが、パンデミックによって持つ者と持たざる者の経済格差はさらに広がる。直撃を受けるのは、情報技術(IT)などの「知識経済」から取り残された貧しい人や、感染の危険性にさらされていても在宅勤務ができない職業の人たちだ。彼らの仕事は、人が作業しなくても済むように簡単にオートメーション化(自動化)され、人工知能(AI)やロボットに取って代わられてしまう。さまざまな企業が危機に対応するために供給網を切り替えれば、それを支える中間層の人々も仕事を失う。経済格差は劇的に増大する。もちろん各国の政府は「社会契約」という観点から何かをしなければならないと認識するだろうが、果たして十分に対応できるのか私には全く分からない。
世界ではグローバリゼーションとは正反対の力が働く。グローバリゼーションが終わるわけではないが、私たちが進む軌道は世界をバラバラにするものに変わっていくだろう。収入や就業機会の格差が広がることへの反発が強まり、ナショナリズムやポピュリズムはますます伸長する。人々はソーシャルメディアを通じて自分がそうだと思うニュースしか見なくなっており、この傾向はさらに強まる。エスタブリッシュメント(既得権益層)に対する反発もより激しくなるだろう。
いつになれば普段の生活を取り戻せるのか。危機が終息したと言えるようになるには3年はかかるだろう。ただ、終息してもかつてのような世界にはもう戻らな…
この記事は有料記事です。
残り4002文字(全文5118文字)
毎時01分更新

スポーツ界の財源がピンチだ。新型コロナウイルスの感染拡大で…

新型コロナウイルスの感染拡大が続く人口13億人のインドでは…

「どうして太陽は他の星より大きいの?」。5歳の長男に聞かれ…