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ネット配信は活路になるか 京都のライブハウスが試行錯誤 休業要請1カ月

ライブのネット配信に取り組む「Live Spot RAG」の秋葉隆さん(右)=京都市中京区で2020年5月14日午後6時3分、南陽子撮影

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 新型コロナウイルス対策の休業要請が京都府で実施されてから、18日で1カ月となった。16日から解除となった施設もあるが、過去にクラスター(感染者集団)が発生したなどとして、ライブハウスなどは休業を余儀なくされている。先行きが見通せない中、苦境に立たされている京の“音楽文化の発信拠点”を訪ねた。

 「もう以前には戻ることはないやろうと思っています」。公演のキャンセルが相次ぎ、休業を余儀なくされた4月に開店40年目を迎えたライブハウス「Live Spot RAG(ラグ)」(京都市中京区)の秋葉隆さん(54)が話す。

 1981年に小さなジャズ喫茶として始まった「ラグ」は、88年から木屋町通に面したビルの5階で営業する。フロアは100席。サックスの渡辺貞夫さんら、ジャズ界を代表する奏者が定期的にステージに立つことで知られ、ミュージシャンのサインでいっぱいの壁や天井が、夜ごとの熱気を物語る。

 店長であり運営会社の社長でもある秋葉さんが、1本の電話を受けたのは2月半ば過ぎだった。3月1日の出演者から「どう思う?」と尋ねられたのだ。大阪のライブハウスでのクラスター発生は、まだ判明していない頃。演者も、集まるファンも年配者が多く、中止としたが「その頃はやりましょうよ、と説得しようかと思ったくらいだった」と明かす。

 その後、感染者数の増加に比例するかのように、ライブのキャンセルが積み上がっていった。3月は7公演、4月は22公演、5月は16公演が中止や延期に。入るはずだった飲食代も消え、府がライブハウスに休業要請を出すより前の4月8日をもって休業した。

 「行きたいんやけど、職場に止められていてごめんな」「家族がおるから行けへん。ごめん」――。自主的に休業を決めた背景には、常連客の言葉があった。「お客さんを申し訳ない気持ちにさせたらあかん」。そう考えた。

 ただ、賃料は光熱費を含めて月に70万円。別に練習スタジオも経営し、同じくらいの経費がかかる。社員は9人。銀行から融資を受けた。20人超のアルバイトには休んでもらっている。

 活路を見いだそうとしているのが、ライブのネット配信だ。カメラ、照明、映像機器などを数十万円かけて買いそろえた。「配信に必要な機材には公的な助成も受けられるようなので『いてまえ!』と」と笑い飛ばす。

 本当は「配信なんか絶対せえへん」が持論だった。3月中に行ったテスト配信でも「何でこんなん、せなあかんねん」とやるせなさが募った。出演者からも「俺たちはライブミュージシャンやろ?」と言われた。

 ただ、4月末のライブ配信では視聴者が151人を数えた。北海道や高知から見てくれた人も。「ここでは立ち見でも120人なのに、1000人でも1万人でも、地球のどこからでも見られる。可能性があると感じた」

 オンラインでチケットを売り、出演者に払う割合はこれまでよりも多くしている。「ミュージシャンも仕事が全くなくなったので、少しでも応援し、ステイホームのお客さんに届けたい」

 売り上げは微々たるもの。配信技術を磨くため、ミュージシャンに協力してもらい、チケット代を無料としたこともある。店を再開できたとしても、席数を減らすといった対策は必要になる。「2月以前にはもう戻らない」。今では仲間にライブ配信してみないか、と声を掛けている。

 「正解かどうかは分からないけれど『これが正解』と信じてやっている。5年後、10年後と続いていくためのチャレンジです」

いつ収束するか分からず閉店も

閉店した「京都VOXhall」が入るビル=京都市中京区で2020年5月14日午後4時6分、南陽子撮影

 京都市内に20店ほどあるとされるライブハウスのうち「京都VOXhall」(中京区)は4月末で閉店に追い込まれた。店長だった有堀誠さん(38)ら社員3人は5月15日付で解雇された。運営会社が変わった時期も含め、40周年の節目の年での幕切れだった。

 有堀さんによると、河原町三条でビルを運営する会社が1980年、「BIG BANG」の名で始めたライブハウスが前身。11月には記念イベントを計画していたが、新型コロナで書き入れ時の3月に予定していた音楽イベントの大半が中止や延期に。4月15日に運営会社から突然、「すぐに閉める」「いつ収束するか分からず、収益が見込めない」と告げられたという。

 有堀さんは、同じビル内の飲食店の店長も任されていた。かねて赤字が続いており、一緒に閉店に。「今この段階でなぜ体力がないと判断するのか、と言いたかったが……」と悔しがる。

 17歳でアルバイトとして働き始め、24歳の時に当時の運営会社が撤退することになり、「自分たちにやらせてくれ」と頼み込んで店長となった。運営を見直し、近年は学生バンドの発信拠点として力を入れていた。

 有堀さんは「クロージングパーティーも何もできず、悔しい」としつつ「今まではVOXhallという場で面白いことをやろうと『オフライン』の仕事ばかりやってきたが、違う世界にトライするチャンスにできる」と前を向く。自分自身で新たなライブハウスの開設を目指しながら、オンラインでの発信に向け腕を磨こうと決めている。【南陽子】

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