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東京へ ともに歩む

毎日新聞

ソフトボール日本代表の上野由岐子。37歳となった今もエースとしてチームを引っ張っており、来年の東京五輪で活躍が期待される=千葉県成田市で2018年8月2日、宮武祐希撮影

東京・わたし

1年延期ショックから再出発したエース ソフトボール・上野由岐子

 世界的な新型コロナウイルスの感染拡大を受け、1年延期となった東京オリンピック。4年に1度の舞台を目指してきた選手たちの中でも、特にベテラン選手は調整やモチベーションの維持に難しさがある。ソフトボール日本代表のエース、上野由岐子投手(37)=ビックカメラ高崎=に今の思いを聞いた。【聞き手・細谷拓海】

 ――3月に東京五輪延期が決まりました。

 ◆ショックは大きかったですね。今年は7月を目標に年明けからかなりペースアップして調整をしてきました。良い感じで仕上がっていたので、「あと1年か」「もう1年頑張らなきゃいけないのか」と思ったのが正直なところです。ベテラン選手にとって1年という時間は大きい。体の面だけでなくメンタル面も含め、今まで以上に一喜一憂するんじゃないかという不安はあります。ただ、1カ月ゆっくりしたことで、「もう次に向かって進んでいかなければいけないな」という気持ちになりました。現状を受け入れ、何をすべきか、何ができるのかということを考えて過ごしています。

延期された東京オリンピックに向け「後悔のないよう準備をしていく」と語るソフトボール日本代表の上野由岐子=ビックカメラ高崎提供

 ――気持ちをどう切り替えたのですか。

 ◆意外と切り替えは簡単でした。仕方がないというか、自分だけの問題ではないからこそ、受け入れることができました。今は皆でどう協力して、どう乗り越えていくかが求められています。

 ――昨年、顎(あご)を骨折した後も、「起きたことは振り返らない」と前向きでした。

 ◆どうあがいても延期は変わりません。ただ、コロナのせいでオリンピックに出られなかったというふうにはしたくない。皆が同じ環境で戦っているので、これを自分のものにできた者の勝ちだと考えています。うまく休みも入れながら、やることはしっかりやって有意義な時間だったと言えるようにしたいですね。不完全燃焼ほどストレスがたまるものはないので、ポジティブに、自分の気持ちをうまく燃焼させていければと思っています。

 ――「1年、準備のための期間ができた」という考え方もあります。

 ◆そうですね。もしかしたらまたけがをしてしまうかもしれないし、1年遅れたことでよりいい変化球に出合うかもしれない。何が起こるかわかりませんが、「こうなって良かった」「1年延びたからこそこういう投球ができた」と最後に言えるような状態でマウンドに上がるしかないと思っています。後悔のないよう準備をしていくだけです。

「オンラインでヨガを習い始めました」

 ――五輪開幕戦の予定だった2020年7月22日は38歳の誕生日。上野投手は「神様のいたずら」と表現していましたが、開幕戦のバースデー登板は白紙となりました。

 ◆これでもうこの話題に触れられずに済むと思いました。注目されたくないというのが一番。きっと、神様が私の願いを聞いてくれたんだと思います(笑い)。

 ――日本リーグの前半戦や日本代表合宿も中止となりました。所属チームでの活動は。

トレーニングをする上野由岐子。新型コロナウイルスの影響で日本リーグ前半戦は中止となったが、今秋の開幕に向けて準備を続ける=ビックカメラ高崎提供

 ◆トレーニング施設やグラウンドは使える状況なので、「3密」(密閉、密集、密接)にならないよう工夫しながら練習しています。グラウンドでは分散していれば密になることはありませんが、寮のトレーニング室では換気をしながらグループごとに時間をずらして使っています。

 ――現在の練習のテーマは。

 ◆今はオリンピックに向けてということはあまり考えていません。日本リーグが9月にスタートするので、そこに向けてじっくり準備をしていくという感じです。例年この時期は試合に向けた練習をしていますが、時間がある分、基礎体力作りに取り組んだり、暖かいからこそできる新しいチャレンジをしたりしています。ボール1個分、半個分の出し入れをしっかり意識しながら練習できます。変化球をもっと思い通り操っていきたいので、若い選手と「開幕までに新しい球種を一つ覚えられるように練習しよう」と取り組んでいます。

 ――日常生活で変化はありますか。

 ◆家を出なくなりました。あまり家にいるのは好きではなく、時間があれば自転車などで動き回っていましたが、外出は必要最小限にしています。最近はオンラインでヨガを習い始めました。きちんと教わったことはありませんでしたが、柔軟性がすごく関わってくるし、呼吸法も教わるので、うまくプレーに取り入れられればと思っています。

 ――社会全体に閉塞(へいそく)感が漂っている今、アスリートにはどんなことができると思いますか。

 ◆元気を発信するしかないと思っています。お互いが手と手を取り合っていかなければいけない状況だと思うので、「こういう状況だけど私たちも我慢しながら元気にやっていますよ」「一緒に頑張っていきましょう」とアピールしていきたいです。

うえの・ゆきこ

 福岡市出身。ビックカメラ高崎所属。2001年、チームの前身の日立高崎に入部。04年アテネ五輪は銅メダル、08年北京五輪は決勝までの2日間3試合で413球を投げ抜いて金メダルに導いた。16年に日本リーグで史上初の通算200勝を達成。

細谷拓海

毎日新聞東京本社運動部。1983年、神奈川県生まれ。2006年入社。京都支局、出雲駐在、大阪運動部を経て、16年から現職場で野球やソフトボールを担当。高校時代は硬式テニス部。セーリングの非五輪種目・トッパー級の全日本選手権で99年10位、02年8位となったこともあるが、誰でも出場できる初心者に優しい大会で、腕前は……?