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在宅の重度障害者が窮地に コロナ感染恐れ行動に大きな制限 行政の支援も薄く

事業所の利用者仲間と一緒に近くの公園を散策する田中信太郎さん=田中洋子さん提供

 新型コロナウイルスの感染拡大で、在宅で暮らす重度の障害を持つ人たちが窮地に陥っている。入院することが難しかったり、重症化リスクが高かったりするため、感染を恐れて行動に大きな制限をかけざるを得なくなっているのだ。接触なしにサポートすることも難しいため、感染を防ぎながら従来の生活を維持することも難しい。当事者や家族らが置かれている現状を報告したい。【塩田彩/統合デジタル取材センター】

「感染しても家族が自宅で面倒を見るしか…」 知的障害を持つ男性のケース

 午前4時45分。男性の自室には、こうこうと明かりがついていた。電源が入ったままのテレビから放送休止後のカラーバーがちらつき、ピーという乾いた電子音が響いていた。隣にいる母親が「眠くない?」と声をかけると、男性は横になったまま、ぱちりと開いた目で部屋を見回した。

 この男性は東京都町田市に住む田中信太郎さん(37)。在宅の障害者は今、どうやって暮らしているのだろうか。障害者施設での集団感染が相次ぐ中、在宅の障害者の状況も気になった。これまで取材した当事者に連絡し、5月上旬、田中さんの母親の洋子さん(70)に電話で話を聞くことができた。冒頭の場面は、洋子さんが送ってくれた田中さんの近況を記録した動画の一部だ。

 田中さんには重度の知的障害と自閉症傾向がある。感受性は豊かだ。ロードサービス「JAF」の会員誌が好きで、自宅に届くとうれしそうに眺めては、自室に大切に保管する。日中は市内の生活介護事業所に通い、こつこつと内職に励んだり、利用者仲間と近くの公園を散策したりして過ごす。そんな田中さんの生活が一変したのは、約1カ月前。きっかけは、新型コロナウイルスへの感染リスクを避けるために、日中の通所を自粛したことだった。

 毎日通う場所がなくなった田中さんは、生活リズムが昼夜逆転し、24時間以上眠れなかったり、逆に昼間中眠り続けたりするようになった。体は疲れているのに寝付くことができず、Tシャツの胸元をかみ、苦しそうにすることもある。洋子さんがそばにいると落ち着くため、洋子さんは毎晩、田中さんの隣で布団を敷いて眠るという。

 洋子さんが目下頭を悩ませているのは、食料品の管理だ。食べることの好きな田中さんは、以前から冷蔵庫の食料を好きなだけ食べてしまう「こだわり」があった。通所している時には、洋子さんが日中だけ食材を冷蔵庫に入れていたが、今はそれもできない。しょうゆやオリーブオイルなども飲んでしまうため、食材や調味料はまとめて保冷バッグに入れ、車の中などに保管しているという。

 通所をやめると、日中外に出ることも難しくなった。田中さんは身長176センチと大柄だ。外に出ていろいろな場所へ行きたがれば、洋子さんや父親が引き留めることは難しい。気晴らしに車でドライブに連れ出す以外、この1カ月はほぼ自宅から出ていないという。洋子さんは「やはり室内だとストレスがたまってしまって本人もつらそうです」と説明…

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塩田彩

大阪府出身。2009年入社。前橋支局、生活報道部を経て19年5月より統合デジタル取材センター。障害福祉分野を継続的に取材しています。好物は児童文学。

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