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大学関連

大学オンライン授業「奮戦記」前編 未知のことに戸惑いの日々

筆者の内山勢記者

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 毎日新聞社教育事業室で大学担当として、新年度、提携講座がある複数の大学への記者派遣コーディネートと、三つの大学で授業を行うことになった。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言への対応で、ほとんどの大学がオンライン授業に切り替わった。5月の連休明けに一斉にオンライン授業を始めた大学が多く、システムにアクセスできないトラブルも相次いだ。筆者は、突然のオンライン授業に戸惑いながら取り組んでいる。未知のオンライン授業奮戦記をお届けする。【内山勢】

アクセス集中でシステムダウン

 「授業開始前日の5月10日(日)より大学システムの応答が極端に遅くなり、昨日5月11日(月)にはほぼアクセス不能の状態が続いておりました。これにより学生から『アクセスができない』との問い合わせが多数来ておりました」

 5月12日夜、新年度から担当することになった首都圏のA大学から、1通のメールが届いた。

 同様のトラブルは連休前からポツポツとニュースで流れていたが、連休明けに一斉にオンライン授業がスタートして、アクセスできないトラブルが多くの大学で発生した。わたしが担当するA大学のオンライン授業は5月中旬に開始する予定だった。メールを確認した後、試しにシステムにアクセスしてみた。やはり動かない。延々と待たされて15分後にやっとアクセスできた。これでオンライン授業を乗り切れるのだろうか……。一抹の不安がよぎった。

「Zoom」ってなんだ?

 学生たちは大変だが、もっと大変だと思ったのは大学の講師陣だ。わたしは、仕事で必要なメール、Word、Excel、PowerPointを一通りこなす、ごくごく平均的なITスキルを持つ社会人だと思っている。だが、「オンライン授業」となると勝手が違った。

 「2020年度のオンライン授業について」というタイトルの資料が添付されたメールが届いたのは、3月末。提携講座を持つB大学の担当教授からだった。「オンライン授業Aタイプ」「同Bタイプ」「同Cタイプ」と区分けされ、派遣講師の対応を求めていた。Aタイプは「リアルタイムに実施する授業」、Bタイプは動画視聴中心。Cタイプは資料を提供し、課題を提出させる――というものだ。BとCタイプは理解できたが、問題はAタイプである。

大がかりなテレビスタジオを想像した(画像の一部を加工しています)

 Aタイプは「双方向のコミュニケーションによる授業」として、「大学のポータルサイトに、ZoomのミーティングIDを含むURLなど、受講生への伝達事項を掲示してください。なお緊急事態宣言が発令されていますので、授業は原則として自宅等から実施してください」とあった。すぐに頭に入ってこなかった。

 「Zoom?」「ミーティングID?」「自宅から双方向授業?」。Zoomというウェブ会議システムの存在をこの時はまだ知らなかった。一眼レフカメラの「ズーム」しか思い浮かばない。大型カメラや単一指向性マイク、それにモニターが必要な、大がかりなテレビスタジオを想像し、「大学に行かなければ講義できないのでは? こんな時期に社員を大学に派遣することはできない」とトンチンカンな質問を担当教授にメールで返した。それに対する返信メールには「前代未聞のことで戸惑っているが、愚痴も言っていられない」。担当教授も困惑していたのだ。試しにZoomのソフトをダウンロードしてみたが、使い方がまったくわからなかった。

ヘッドセットも、マイクも、ウェブカメラもない!

 毎日新聞社は新型コロナの感染防止対策として、2月下旬から時差出勤や在宅勤務を順次展開し、全職場へと拡大させていった。さらに、4月7日、安倍晋三首相の緊急事態宣言の発令を受けて、原則在宅勤務となった。上司の許可を得ないと出社できないという厳しいものだ。わたしも同日から在宅勤務に入った。そんな折、上司から「Zoomミーティングをします」というメールが来た。

 Zoomのソフトはダウンロードしてあったが、操作の仕方がわからない。その前に、音声入力のマイクもなかった。慌てて近所の家電量販店2店を回ったが、ヘッドセット(イヤホンとマイクがセットになったもの)もマイクもウェブカメラもすべて売り切れだった(カメラはノートパソコンに装備されていたので実は必要なかった)。

テレワーク関連の機材は一つ残らず売り切れていた=首都圏の家電量販店で

 店頭から消えたのはマスクや消毒液だけかと思っていたが、テレワークの影響でヘッドセットもマイクもウェブカメラも消えた。通販サイトのAmazonでも「一時的に在庫切れ」ばかり。別のネットショップでどうにか購入しギリギリ間に合った。基本的なスキルはZoomミーティングで習得できた。

必死に独学する在宅勤務の日々

 各大学には独自の学習支援システムがある。シラバス提示や出欠・成績管理、リポート提出、テスト、大学・講師・学生間の連絡などをポータルサイトで一括管理している。そこにアクセスすれば事足りるので大学や学生にとっても便利なシステムだが、複数の大学を担当するわたしとしては、すべてのシステムの操作方法を覚えなければならない。送付されてきた資料を読み込み、メールで更新の連絡があった操作を頭にたたきこむ。その上で、ポータルサイトに自分の授業で使うオンライン授業のコンテンツをアップする。

 大学からは、さらに、Zoomのほか、同じウェブ会議システムのCisco Webex Meetings、システムダウンに備えてコラボレーションプラットフォームのMicrosoft Teams、映像ソフトのMicrosoft Stream、動画投稿サイトのYouTube、オンラインストレージのMicrosoft OneDriveなどに関する案内が、次から次へと送られてくる。ありがたいが、短時間で習熟できるレベルではない。暗たんたる気持ちになった。

 ただ、在宅勤務は通勤時間もなく、新しいシステムのスキルを習得するには最適だった。ひたすら資料を読むことに没頭。インターネットの動画で使い方を学び自分で何度も試した。会社なら習熟している人に聞けばいいが、在宅勤務では独習である。「万全とはいえないが、大学のシステムも外部のサービスもどうやらこなせるようになった」と一息ついたのは、開講直前の5月の連休前半の頃だったろうか。(後編は、22日午前10時公開)

内山 勢

毎日新聞社教育事業室

 1983年、毎日新聞社入社。山形支局を振り出しに、週刊サンデー毎日編集部、大阪社会部、週刊エコノミスト編集部、東京経済部各記者・編集委員、BS11プロデューサーなどを経て、2020年3月まで、毎日新聞夕刊で大学生が紙面を作る「キャンパる」の編集長。4月から現職。

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