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論の周辺

「細部に入る」ということ

 新型コロナウイルスの世界的感染拡大がもたらした事態をどう考えたらいいのか。多くの人々がさまざまな視点から発言しているが、できることなら考えを聞いてみたいと思い浮かぶ一人に、詩人・評論家の吉本隆明(1924~2012年)がいる。言うまでもなく、戦後日本を代表する思想家の一人である。

 このほど、未公刊のものを含む講演集『地獄と人間』(ボーダーインク)が出版された。副題に「吉本隆明拾遺講演集」とあるように、既刊の『吉本隆明<未収録>講演集』(全12巻、筑摩書房)の後に見つかった音源などをもとに編まれたという。吉本の仕事に関しては全38巻・別巻1の全集のほか、講演後に参加者らと交わしたやり取りを収録した全7巻の質疑応答集も刊行中で、没後8年を経た今も人気は根強い。

 タイトルは強烈だが、おあつらえ向きの話があるわけではない。収められた11本の講演は66~07年にわたるもので、テーマも文学から消費社会、宗教論まで多様だ。吉本独特の用語も出てくるし、音源そのままと思われる話し言葉はニュアンスが分かりにくいところもある。とはいえ、他の誰とも異なる射程の長い思考が、読者それぞれの関心に従って見いだせるだろう。

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