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 夜中に目が覚めて、一瞬、自分がどこにいるのかわからなくなる。自分の家ではないことだけは確かなのに、思考はそれ以上進まず、前進を、いや後退でもいいが、とにかく動きを促そうと手を搔(か)こうとするが、ぴくりとも動かず、混乱と怯(おび)えだけが増殖する。

 一見、何の変哲もない壁、しかし明らかにその向こうで怒号でも身震いでもある過剰なものらがわずかばかりの空気を、隙間(すきま)を、奪い合って激しくもみ合い、いまにもひび割れそうになっている壁の、それでも穏やかで滑らかな表面に、すっと一筋の水らしきものが流れ落ちるようにして、ホテルだ、島のホテルにいるのだ、という声ならぬ声が聞こえくる、というか、通り過ぎた瞬間、手が、不愉快な蚊を追い払おうとするかのごとく宙を勢いよくえぐり取る。

 ベッドで上体を起こしたまま、しばらく闇を見つめるが、何度かえぐられた闇は、もちろんその分だけ薄くなっているということはない。むしろ濃くなっているようだ。

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