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「介助犬」育成団体の経営苦境 収益の柱、街頭募金できず CF開始

訓練士が落としたカードを口で拾って渡す、介助犬候補のゴールデンレトリバー「アーム」。外出自粛の中でも日々の訓練は欠かせない=兵庫県西宮市の兵庫介助犬協会で2020年5月19日午後4時57分、稲田佳代撮影

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 新型コロナウイルスの感染拡大で、身体が不自由な人の日常生活をサポートする「介助犬」を育成する団体が、収益の柱となっている街頭募金ができなくなり、経営面に影響が出てきている。兵庫県西宮市のNPO法人「兵庫介助犬協会」では苦境を乗り切るため、ウェブ上で資金を募るクラウドファンディング(CF)を始めた。22日の「ほじょ犬の日」にちなんだイベントがウェブ開催に変更されるなど、新たな事業展開も模索されている。【稲田佳代】

PR犬と一緒に介助犬への理解や募金への協力を呼びかける兵庫介助犬協会のスタッフやボランティア=神戸市中央区で2017年12月8日、高尾具成撮影

 兵庫介助犬協会の事務所では、緊急事態宣言中も毎日、介助犬候補の6頭が順番に訓練を受けていた。訓練士の守田彩香さん(23)が「テーク」と指示を出すと、ゴールデンレトリバーの「アーム」が床に落ちたカードを口で拾う。「ギブ」の一言で守田さんの手元にカードを置いた。マスク越しの指示をアームは理解していた。

 同協会は介助犬を育てるため2005年に設立され、16年には千葉県船橋市にも拠点を開設。障害の種類や程度に合わせて介助犬を育成し、15年間で11人に13頭を無償貸与してきた。育成事業の委託先に選ばれると1頭当たり150万~200万円の委託金が支給されるが、実際には誕生から引退後の生活まで500万~800万円がかかるため、差額は協会が負担する。

 協会の運営費は年間約2400万円。18年度は資金の9割を寄付でまかない、うち街頭募金が6割と大きな比重を占める。しかし今年は3月中旬以降、新型コロナの感染リスクがあることから街頭募金を自粛した。5月の大型連休にあるイベントでの活動も中止。3~5月の街頭募金による収入見込みは前年同期比の1割に満たず、約548万円の減収。外出自粛が資金難に直結した。

「元々ぎりぎりの資金で運営」

 他の介助犬育成団体も苦境は同じだ。NPO法人・日本サポートドッグ協会(奈良県生駒市)は4、5月の街頭募金ができず、講演会も中止に。事務局長の山本明子さん(45)は「元々ぎりぎりの資金で運営している。個人の資金で穴埋めすることになるかも」と切実だ。

 介助犬の訓練は継続し、餌代や医療費もかかる。募金ができなければ秋以降に事業停止となる恐れもあり、兵庫介助犬協会は初めてCFに挑戦。返礼品にはポストカードや缶バッジのほか、介助犬訓練士一日体験などをそろえた。

 同協会理事長の北澤光大さん(38)は「外出自粛で行動を制限されて不自由さを痛感した人は多いと思う。障害のある人の多くは日常的に制限されていることを知ってほしい。CFで支援者の裾野を広げるチャンスに変えたい」と訴える。

 CFの専用サイト(https://camp-fire.jp/projects/view/265469)。

訓練やイベントも変更迫られ

 新型コロナの影響で、介助犬育成を担う社会福祉法人・日本介助犬協会(横浜市)では、事業運営の手法の変更を迫られた。介助犬の使用者は基礎疾患を持ち、感染すると重症化するリスクが高い人が多い。そのため、スタッフの出勤を最小限にし、使用者が介助犬と一緒に公共交通機関や店を利用する同行訓練は中止。引き渡し後の継続指導はテレビ電話に切り替え、介助犬のワクチン接種も使用者とスタッフ、医師がそれぞれ一切接触しない形にした。

 恒例の「介助犬フェスタ」はウェブ開催に変更した。ただ、移動が難しく会場に来られない関係者や、会場では見せられなかった介助犬の動きを動画で見せられる利点もある。

 フェスタは、23日午後1時から、公式サイト(https://kaijoken-festa.jp/)で、介助犬が働く様子を見せるデモンストレーションや、使用者と介助犬ペアの認定までの道のりなどを配信する。

 同協会専務理事の高柳友子さん(53)は「経営面も大変だが、事業自体も大きく変えなければいけない」と話していた。

補助犬

 視覚障害のある人が安全に歩けるよう寄り添う盲導犬、聴覚障害のある人に必要な音を知らせる聴導犬、手足に障害がある人の動作をサポートする介助犬の総称。ペットではなく、公共交通機関や飲食店などにも同伴できるよう訓練を受け、身体障害者補助犬法に基づいて認定される。厚生労働省のまとめによると、2019年10月1日現在の実働頭数は盲導犬928頭、聴導犬67頭、介助犬61頭。

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