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大学関連

大学オンライン授業「奮戦記」後編 急場しのぎで独学の日々

筆者の内山勢記者

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 突然のオンライン授業導入に戸惑いながら、対応するための装備品を購入し、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として在宅勤務をしながら、新しいシステムを急場しのぎで独学する日々が続いた。毎日新聞社教育事業室で大学担当として三つの大学で授業を行うわたしは、いよいよオンライン授業の実践に突入した。【内山勢】

試行錯誤のオンライン授業が始まった

 5月の連休明けにオンライン授業を開講する大学は多かった。A大学は講師に「大学のシステムがダウンするおそれがあるので、外部のサービスを積極的に利用してほしい」という要請をしていた。学生の膨大な個人情報を管理する大学のシステムはセキュリティーも堅固だ。だが、結果わかったことは、通信量の多いオンライン授業に対応しきれないバージョンのシステムが多かったということだ。

 わたしはいろいろ試行錯誤した末、最終的に取り入れたのが、動画視聴とライブミーティングを組み合わせた「ハイブリッド型」の授業だ。事前にウェブ会議システムのZoomで、パワーポイントを使用した違う種類の動画を2本作り(1本20~30分)、それを動画投稿サイトのYouTube (Microsoft Streamでも可能)に公開日時を指定した「限定公開」としてアップし、大学のポータルサイトにURLを載せる。そのURLは大学のシステムダウンに備えメールでも同時に通知した。大学の時間割とほぼ同じ時間帯に授業を開始し、学生が動画を視聴した後、指定した時間からZoomによる双方向型のライブ授業に切り替える。ライブ授業は学生の通信環境と負担を考慮し20分程度とした。

学生たちとオンラインで会話する筆者=自宅のマイルームで(画像の一部を加工しています)

 双方向のZoomでの顔合わせは重要だと感じた。ちゃんとつながるか最初は不安だったが、指定時間になるとパソコンの画面には次々と学生たちの名前や映像が入ってきた。まだ顔合わせレベルだが、グループ会議機能もあるのでそれも試行してみたい。履修生たちの声を聞きながらさらに工夫の余地はあると思う。

 わたしは「ハイブリッド型」を採用したが、講義資料をアップする課題型で行う講師も多いようだ。大学が、通信量の多いライブ型や動画を視聴するオンデマンド型を積極的に推奨していないという事情もある。ある非常勤講師は「講義資料をサイトにアップして学生がそれを読む形式になるが、どうするんでしょうね」とさじを投げた感じだ。「双方向性のない味気ない感じ。試行錯誤の連続で対面授業より難しい」と真正面から取り組もうとする教授の声も聞こえてくる。戸惑っているのはどこも同じようだ。

さまざまな思いを吐露する講師や学生たち

 学生たちにもオンライン授業の感想を聞いてみた。

 「授業を受けるスタイルが変わり、その変化についていくのが精いっぱいな部分はあるが、それぞれ違う場所から同じ授業を聞き、受けている感覚が不思議で、今はこの感じを楽しんでいる」「現代だからこそできるオンライン授業を学生のうちに体験できて、ある意味うれしい」「オンライン授業を開始して、家での授業は新鮮で想像より落ち着いて参加できました」「オンライン授業は非日常的で楽しく参加させてもらっています」など好意的に受け止める学生がいる。

 一方で、「Zoomにはかなり慣れたが、パソコンではなくスマホなので、カメラの向きや背景を気にしたりと大変なことが多い」とスマートフォンでの利用に苦労する人や、「1人暮らしをしているが、畳部屋なので座り方に困り、腰がとても痛くなる」「眼精疲労や肩こりで体に深刻なダメージを与えそう」など肉体的苦痛を訴える人がいる。友人と直接会えないことに「周りの学生の雰囲気が感じられないことや、画面越しの対面に距離を感じるので、とても寂しく感じています」「早くみんなと対面で楽しく授業したい」と、一日も早い対面式授業を望む声は根強い。

 また、B大学が案内したような講義資料のみの「Cタイプ」授業には、「ほとんどの授業はプリント配布だけで、授業料を払うのは納得いかない」「学費に対して内容が見合っていない」など不満もある。

 ウェブでのライブ授業だと、通信状況で映像を出さないこともあるが、画面に一人一人の映像が表示されるので、「熱心な学生は前、眠い学生は後ろの席」という伝統的なスタイルが成り立たない。「みなが最前列にいる」状態であり、学生たちはライブ授業中ずっと緊張を強いられるようだ。こちらも最前列の学生たち全員から注視されている感じがして気が抜けない。対面式とまではいかないが、短い時間でも講師と学生、あるいは学生同士の心の交流が感じられ、ライブによる双方向型授業は必要だと思った。

新しいフェーズに入った大学のオンライン授業

 この1カ月で、集中的にオンライン授業に関するITスキルを学んだ。2、3年分ぐらい習熟した感じである。自分にとっては1995年の「ウィンドウズ95」発売以来のIT革命だ。新型コロナ感染防止で始まった大学のオンライン授業。収束したらおしまい、ではなく、新たな大学授業の可能性を教えてくれたはずだ。ある大学の教授は「新しいツールを試行するチャンスでもあり、意外と楽しい毎日だ」と語る。対面型のリアル授業とオンライン授業が融合した新しい授業スタイルが今後誕生していくのではないか。大学に期待したいし、わたし自身も模索していくつもりだ。

内山 勢

毎日新聞社教育事業室

 1983年、毎日新聞社入社。山形支局を振り出しに、週刊サンデー毎日編集部、大阪社会部、週刊エコノミスト編集部、東京経済部各記者・編集委員、BS11プロデューサーなどを経て、2020年3月まで、毎日新聞夕刊で大学生が紙面を作る「キャンパる」の編集長。4月から現職。

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