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恋ふらむ鳥は

/7 澤田瞳子 画 村田涼平

 葛城はまたも親指の爪を苛々(いらいら)と嚙(か)んだ。彼にしては珍しく、何か言いかけてはためらった末、瞼(まぶた)の厚い目を眇(すが)めて母親を仰いだ。

「五千名でも、一国を救うにはまったく足りませんよ」

「それぐらい分かっておる。急ぎの徴用ゆえとりあえずは二十名ずつで許してやるが、半年がかりで軍備を行わせ、次は評(こおり)あたり百名ずつ出させる。そうすれば一万余の大軍があっという間に出来上がる道理じゃ」

 声を弾ませる女王にそそくさと一礼し、額田は御前を退いた。なるべく音を立てぬように女王の執務場である大殿の板戸を閉ざし、明るい秋陽(あきび)に照らし付けられた階(きざはし)を降りる。長殿の庇(ひさし)の下に身を寄せ、激しく動悸(どうき)を打つ胸をなだめていると、けたたましい音とともに先ほど閉ざしたばかりの板戸が開いた。

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