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母と人生の連弾 脳性まひのピアニスト 指1本で自己表現

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 ターン、ターン……。右手の人さし指1本で奏でるピアノの高音がホールに響いた。スローなテンポで進んでいく澄んだ音色は、次第に数百人の聴衆を魅了していった。

 2019年9月、東京都内であった障害者ピアニストによるコンサート。岩崎花奈絵(かなえ)さん(27)がステージ上にいた。車いすから前かがみになって鍵盤を見詰め、一音一音確かめるように指先ではじく。その左隣に座った母の準子さん(58)が低音部を伴奏する。一つのピアノを2人で演奏する「連弾」。ベートーベンの有名な歌曲「君を愛す」と、ジャズピアニストのオスカー・ピーターソンの代表作「自由への賛歌」を披露すると、会場は拍手で沸いた。

 花奈絵さんは生まれつき重度の脳性まひを患い、手足が不自由だ。比較的まひが軽い右手の人さし指で演奏し、主に伴奏を担当する準子さんとのコンビで数々のコンサートに出演している。鍵盤をタッチするのは指1本だけなので難しい曲を弾くことはできない。それでも鍵盤をたたく力加減が絶妙だという。花奈絵さんが12年に入学した「国立(くにたち)音楽院」(東京都世田谷区)の講師で、楽曲を提供しているジャズピアニストの池…

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