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ブラック・チェンバー・ミュージック

/288 阿部和重 写真・相川博昭

 熊倉リサは終始もっぱら聞き手に徹していたが、途中いくつか質問も入れてきた。それに対しては横口健二が答えることもあればハナコ(﹅﹅﹅)が不足をおぎなうこともあり、鬼判事の関心をふたりで適宜に受けとめていった。

 とりわけ熊倉リサが補足をもとめたのは入手後の論文の用途だ。

 筆者がほんとうに金正日なのかどうかはともかく、全文を読んだことのある立場からすれば、アメリカとの外交交渉が本格化していたご時世に北朝鮮の高官がわざわざとりよせてなにかに利用したがるような内容とは思えない。あのヒッチコック論におぼろげながらもそんな印象を持っている彼女としては、だからこそどんな使い道があるのかと強い興味をおぼえたのだという。

 ただしその興味が満たされることはなかった。ボスより任務を直接あたえられたハナコ(﹅﹅﹅)にも、論文の用途というのは見当をつけがたい謎らしかった――自分の役割いがいまるで知らされていないという彼女は、当の話題やボスの正体については首を横に振りつづけるしかなかったが、それに対して熊倉リサは事情をかんがみたのか、根ほり葉ほりせんさくをかさねるような追及はひかえていた。

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