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MOTTAINAI

地球の肺を守ろう~コンゴ熱帯雨林保護の最前線から(12)村民に「持続可能な開発」の重要性訴え=大仲幸作

コンゴ盆地の周辺部に位置するクイル州では急速に森林減少が進んでいる=2020年2月、セスナ機から空撮(大仲幸作さん提供)

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 「地球の肺」と呼ばれるコンゴ盆地の広大な熱帯林は、どうして減少が進んでいるのでしょうか。私はその答えを求め、コンゴ盆地の周辺部に位置するクイル州のイディオファ地区への出張を企画しました(前回参照)

 キンシャサから丸2日間かけて、やっとのことでイディオファまで到達した私たちは、早速、近隣の村々を目指しました。そして、街中から沿道に至るまで、通学途中の子供たちであふれ返っていることにまず目を見張りました。統計資料によると、このイディオファ地区の人口は何と250万人。私はこの地区の行政官(知事のような方)が「ビジネスを行う上での最大の魅力は増え続ける人口である」と力説していたことを、ふと思い出しました。

しかし、このことを環境の側面から見れば、果たしてどのようなインパクトがあるのでしょう。数百万にも及ぶ人々の衣食住を確保するため、この地域の森林が非常に大きな開発圧力にさらされていることは明白でした。その証拠に、車窓からは既に大半の森林が姿を消していました。キンシャサから約800キロ。ここまで来れば、うっそうとした熱帯林を視察できるだろう、そうした私の期待は、残念ながらものの見事に裏切られました。

村人と共に踊りながら意見を述べるブンダ族の村長(右)。コンゴにはユニークな慣習をもつエスニックグループ(部族)が多数存在する=2020年1月(大仲幸作さん提供)

 ほどなくして目的の村々に到着した私たちを、村長以下数十人の村人たちは、温かく笑顔で迎えてくれました。早速、ヒアリングの開始です。「この辺りに残った森林の所有者は?」「森林を伐採する人たちはどこからやってくる?」「何を見返りに伐採を許可している?」等々……。私たちは村人たちを質問攻めにしました。しかし、彼らは嫌な顔をせず、真摯(しんし)な態度で一つ一つ回答してくれました。そのかいあって、少しづつ、この地域の森林伐採の事情が明らかとなりました。

 村人たちは、町から足繁く通うビジネスマン(仲買人)などに、ほんのわずかな見返りで「地球の肺」と呼ばれる貴重な熱帯林を伐採をさせていました。また、彼らはそうした現状を「何ら問題だとは感じていない」と答え、「これまで、村の会合において森林の減少が話題に上ったことは一度もなかった」と回顧したのです。

 森林からさまざまな恵みを受けて生活を営んできた人々が、地域の森林が消失しつつあることを認識しているにもかかわらず、看過していました。地球人としても、また彼らの立場に立ってみても、これは気が気でない話でした。私たちの立場からはなかなか理解しづらい話ですが、広大な熱帯林に囲まれ、それらを一方的に開発することで生計を立ててきた彼らにとって、「森林保全」は、これまで接したことのない、全く新しい概念なのかもしれない、私はそう思いました。

村人に案内されて伐採現場を視察する。彼らは地域の森林資源が枯渇しつつあることを認識していた。=2020年2月(大仲幸作さん提供)

 しかし、では一体どういった切り口で、彼らと地球温暖化や生物多様性など地球規模の環境問題を共有し、解決に向けた取り組みを進めていくことができるのでしょうか。

 環境省の同僚は、会合の締めくくりに村人たちに向かって、「生活を営むために必要不可欠な存在である森林を、子供たちの世代に引き継ぐことなく、貴方たちだけで全て伐り尽くしてしまって本当にいいのか?」と説きました。国連が全人類共通の目標として掲げる「持続可能な開発」(サステナブル・ディベロップメント)の理念は、果たしてコンゴ盆地の住人たちの理解、そして共感を得ることができるのでしょうか。(つづく)


大仲幸作(おおなか・こうさく)1999年に農林水産省入省。北海道森林管理局、在ケニア日本大使館、農水省国際経済課、マラウイ共和国環境省、林野庁海外林業協力室などを経て、2018年10月から森林・気候変動対策の政策アドバイザー(JICA専門家)としてコンゴ民主共和国環境省に勤務。

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