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社説

緊急事態の全面解除 教訓刻み再流行に備えを

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 新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が全面解除された。

 宣言が続いていた東京都など5都道県でも新規感染者数が減少傾向にあり、医療体制に余裕が出たことなどから判断した。

 宣言は7週間に及んだ。一人一人が休業や外出自粛に協力し、人と人との接触を大幅に減らした効果が出た。

 今後は、感染拡大の中心となった首都圏でも社会・経済活動が再開に向かう。ただ感染のリスクはなお残る。新規感染者数の推移に注意しながら、段階的に再開を進める必要がある。

 特に東京都は、これまで感染経路が不明な人の割合が多かった。こうしたケースでは、対応が難しいことを忘れてはならない。

 新型コロナ対策では、多くの課題が明らかになった。

医療の拡充を引き続き

 まずは医療体制の確保が遅れたことだ。病床や人工呼吸器の数に余裕がなく、医療崩壊が懸念された。危機的状況を切り抜けた医療従事者や、感染対策の最前線を担った保健所職員らの貢献に敬意を表したい。

 現在では病床は約1万8000床が確保され、最大で3万床を超す見込みだ。他の病気の患者に充てている場合は、感染が拡大した時に速やかに使うことができる仕組みを整えておく必要がある。自治体と医療機関は調整を急いでほしい。

 検査体制の強化も引き続き必要だ。感染の有無を確認するPCR検査は、医師が必要と判断した人でも速やかに受けられない事態が生じた。

 5月半ばにPCRの1日の検査能力は目標の2万件を超え、抗原検査も陽性判定に使えるようになった。医療機関などでの集団感染をはじめ、感染の疑いがある人を速やかに検査できれば感染の拡大防止に役立つ。自治体は国と連携して、検査の特性に応じた活用をしてほしい。

 保健所は、感染者と接触した人の調査から入院先の確保や相談対応まで、業務が集中してパンク状態になった。今後、感染者が再び増えた時に、同じような事態を繰り返してはならない。集中的な研修などで対応可能な人材の確保が必要だ。

 効率化のため、政府は感染者と接触していたかどうかを確認できるスマートフォンアプリを運用する方針だ。個人情報に配慮しながら、効率的な感染拡大防止のため工夫を重ねたい。

 経済的な支援策も混乱した。中小企業への給付金など現金支給は、手続きが煩雑で時間がかかっている。迅速に給付できるようさらに工夫を重ねてほしい。

 需要の回復には時間がかかるだろう。観光業などをはじめ、経営が厳しい状況はすぐには変わらない。特にクラスター(感染者集団)が発生したライブハウスなどは、宣言が解除されても休業の協力要請がしばらく続く。必要に応じて支援の継続を検討すべきだ。

工夫して経済と両立へ

 感染拡大による解雇や雇い止めは1万人を超えた。経済的な苦境から自殺者が増える懸念がある。支援策や相談事業で万全を尽くさなければならない。

 感染が再拡大する事態への警戒を怠ってはならない。政府は再宣言が必要かどうかを、感染者数が倍増する日数などの指標を使い判断するという。

 新規感染者数の推移や病床使用率などを、迅速に把握するシステムの確立が急務だ。指標ごとの再宣言の目安をより明確にすることも必要ではないか。

 新型コロナは無症状の人からも感染が広がり、抑え込みが難しい。しかし、効果が高い治療薬やワクチンが行き渡るのはまだ先だ。

 政府は、収束後の景気浮揚策に旅行、外食料金の割引なども盛り込んでいる。感染リスクを高めかねないだけに、慎重な判断が必要になる。

 感染対策は長丁場とならざるを得ない。これまでの教訓を生かして再流行に備えつつ、社会・経済活動と両立させる「新しい生活様式」を引き続き模索しなければならない。

 新型コロナへの対応を迫られる中で、これまでの常識を覆すさまざまな気づきがあった。企業は、テレワークや時差出勤の効果を実感しただろう。大都市が感染症に弱いことも再認識させられた。社会・経済のあり方を中長期的に見直す契機にしていきたい。

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