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東京へ ともに歩む

毎日新聞

今年3月にポルトガルで行われた大会で個人優勝を果たした田中利幸=日本馬術連盟提供

東京・わたし

「馬は充実期 ピーク維持が鍵」総合馬術・田中 コロナ禍、海外アスリートは今

 総合馬術の2012年ロンドン五輪代表である田中利幸(35)=乗馬ククレイン=は3月にポルトガルで開かれた国際大会で優勝し、東京オリンピック出場に弾みをつけた。ところが直後に活動拠点の英国が、新型コロナウイルスの感染拡大で3月から全土で都市封鎖(ロックダウン)されて日常生活が制限された。テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」で、コロナ禍における海外での競技環境や五輪延期の影響について聞いた。【聞き手・倉沢仁志】

ロックダウン 厩舎の敷地内でトレーニング

 ――東京五輪の延期が決まった時、どのように感じましたか。

 ◆すごく残念というのはありましたけど、中止にならなくて本当に良かったなというのが正直な気持ちです。

英国を拠点に活動する総合馬術の田中利幸=日本馬術連盟提供

 ――延期により、パートナーの馬に影響はありますか。

 ◆自分が乗っている馬は13歳で、ちょうどいい時期なんです。特に問題はないかなと思います。これが17、18歳だとちょっと厳しいかもしれません。1年延期を前向きに捉えて、馬との信頼関係を築いてレベルアップしたいです。

 ――ロックダウンの影響などはありますか。

 ◆私は現在、厩舎(きゅうしゃ)などのある敷地内に住んでいるので、トレーニングは毎日できています。ただ、移動の制限があるので思い通りにトレーニングできない日もあります。直近の出場予定だった大会も中止となりました。食事には気を使っています。余分なカロリーを摂取しないように気をつけています。

ロンドン五輪出場 観客に圧倒された経験

 ――11年にイングランド南西部のグロスターシャー州に拠点を移しました。馬術の本場である欧州で、どのようなことを肌で感じましたか。

 ◆英国には会社の方針で行くことになったのですが、全く環境も違えば、競技人口、競技場の数も違う。英国では、大小含めて年間で200近くの大会があります。日本の環境とは別物で驚きました。世界のトップライダーがイギリスで活動しているので、ローカル(地方)の競技会でも一緒に出場できます。彼らの技術を間近で見ることができるのは、勉強になります。

 ――翌年にはロンドン五輪にも出場しました。

2012年ロンドン五輪に出場した当時の田中利幸=日本馬術連盟提供

 ◆ロンドン五輪は何も知らない状態で出場し、失敗もしました。本当に「ただ出場しただけ」で何も残すことができませんでした。でも、振り返れば、ロンドン五輪を経験できたことが、今回東京五輪を目指す上でも非常に大きいと感じています。

 ――やはり五輪は雰囲気が違いますか。

 ◆そうですね。あの雰囲気は、まず普通の大会では味わえません。観客もいて圧倒されます。でも、そこを体験できたのが本当に大きいと思っています。

3年前に落馬事故 騎乗イメージ磨く

 ――その後も大きなけがをせずにコンスタントに大会に出ていましたが、17年夏に競技中に落馬し、頸椎(けいつい)を骨折しました。

 ◆落馬の瞬間は覚えていないんですけど、クロスカントリーの競技中に障害の踏み切りのタイミングを間違って、そのままひっくり返ったみたいです。ミス無く確実に運ぶレースだと勝負にならない状況だったので、タイムを求めて臨んだ大会でした。しかし、馬をコントロールできなくなってしまって、気付いたら病院のベッドの上。幸い後遺症はありませんでしたが、3カ月のリハビリ生活で馬に乗ることができず、かなりしんどい思いをしました。

 ――けがをしたことでつかんだものはありますか。

 ◆乗ることができない分、時間はありました。昔の自分の騎乗を見て勉強するなどして、良かった時、悪かった時のイメージを作ることができました。これは、今に生きていると思います。また、感覚もさほど失うことなく復帰できました。

東京の目標は団体でのメダル獲得

 ――2大会ぶりの五輪となる東京五輪代表権の獲得、そして「1年後」への抱負を聞かせてください。

 ◆まずは選考で代表を勝ち取ることです。そのためには人馬のベストパフォーマンスを維持できるようにすること。ピークをキープすることが難しいですから。例えば、4月から6月までは良くても、本番を迎える7月に調子が下降してしまうこともあります。そのピークをどこに置くかが大切になってくると思います。僕自身というよりも、やはりパートナーの馬がメインになるでしょう。指示に対する反応の仕方で、調子の良しあしは分かるので、それを見極めていきたいと思います。

 五輪に出場できればベストパフォーマンスを発揮するというのが最大目標です。ロンドン五輪ではできませんでしたから。総合馬術の団体でメダル獲得を目標にしたい。あとは、3種目のなかでもクロスカントリーをぜひ見てほしい。馬本来の迫力が間近で伝わってきます。

田中利幸(たなか・としゆき)

 1985年2月生まれ。福岡市出身。中学3年の夏に偶然見かけた乗馬クラブの案内をきっかけに、馬術にのめり込む。馬にまたがった回数を示す「鞍数(くらかず)は裏切らない」が座右の銘。2014年仁川アジア大会総合馬術団体銀メダル。18年9月に米ノースカロライナ州で行われた世界選手権では、団体4位、個人でも日本勢最上位の15位に食い込んだ。今年3月にポルトガルであった国際大会で個人優勝。東京五輪の代表入りも期待される。