連載

余録

毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

連載一覧

余録

飛んだボールは「羽がはえたよう」に見えた…

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 飛んだボールは「羽がはえたよう」に見えた。終戦の8・15から2カ月余、京都の旧制中学、今の高校にあたる9校の野球大会だ。「ボールに羽」は打った拍(ひょう)子(し)に縫い糸が切れ、ボールが壊れてそう見えたのだ▲戦後最も早い時期の野球大会の記録という。バットやグラブは両チーム共用、審判の防具は畳を切ったもの、古ボールを縫い直したボールはよく壊れた。選手らが驚いたのは、どこで聞いたか観客が集まり、声援をくれたことだった▲終戦後の野球再開は同じ年の11月の早慶戦、その1週間後のプロ野球東西対抗戦が球史に名高い。会場は占領軍がステート・サイド・パークと名づけた神宮球場。焼け野原となった東京で早慶戦はなんと4万5000の観客を集めた▲選手も観客も、いかに野球の復活を待ち望んでいたかを伝える歴史の一コマだ。今もまた、別な意味で歴史的な「復活」となろう。コロナ禍で延期されていたプロ野球開幕日が国内のプロスポーツの先陣を切って来月19日に決まった▲レギュラーシーズンは120試合に減らし、当面は無観客試合にするという。先が読めない今後の感染状況である。7月の再開をめざすサッカーのJリーグと共に、専門家のアドバイスを求めながら事態の変化に適宜(てきぎ)対応するそうだ▲選手の間の無用の接触も控えられ、野球文化も大きく変わりそうな「ウィズ・コロナ」のシーズン開幕となる。ファンのみならず、人々の心に喜びの羽を授けてくれるスポーツという平和の回復を願う。

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集