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男の気持ち

自転車 京都府舞鶴市・沢田宗夫(元会社役員・77歳)

 終戦後、父が業務上の事故で左腕を失い障害者になってからは、家計の中心は看護師であった母に移った。勤務先の病院へは徒歩で通っていたが、片道4キロほどの道のりはつらいだろうと、少年の私も強く感じていた。自転車に乗れなかった母は、仕事や家事の合間に練習を繰り返していたが、幾度となく転倒し、あざが絶えなかった。辛抱強い母ではあったが、自転車との相性はよほど悪く、やがて断念したようだった。

 看護師は夜勤もあり、夜の通勤は父が送り迎えするようになった。自転車の荷台に母を乗せ、片腕で自転車をこぐ父の姿が脳裏に焼き付いている。風の強い日や、夏の夜道に汗をかきながら母を支えている姿は、貧しい家庭環境の中にあって、私たち兄妹に示す無言の教育になっていたに違いない。「子は親の背中を見て育つ」のことわざの通り、我慢強く生きていく姿勢を学ぶことができたと思っている。

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