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香港の国家安全法制 政治の自由奪う禁じ手だ

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 中国の全国人民代表大会(全人代)が、香港の政治的統制を強める国家安全法制を直接、制定する方針を決めた。香港の立法権を無視し、高度な自治を認めた「1国2制度」を形骸化させる決定だ。

 政治活動の自由が制限されれば、世界に開かれた国際金融都市・香港の価値も損なわれる。中国は影響の大きさを直視すべきだ。

 国家反逆や転覆などを禁止する法律は本来、香港が制定することになっている。2003年には国家安全条例案が提出されたが、50万人デモなど反対運動の高まりで撤回に追い込まれ、その後、立法の動きはストップしていた。

 中国は今回、香港での立法手続きを踏まず、全人代で制定するという脱法的な手法を使った。昨年、容疑者の中国移送を可能にする「逃亡犯条例」改正案が反対運動の激化で撤回され、香港に制定を託すのは困難と判断したという。

 全人代決定に基づき具体的な法律が策定されるが、テロ行為も対象で、法執行のための出先機関を香港に設置することも可能になるという。9月の香港立法会選挙の前に施行される見通しだ。

 香港政府の林鄭月娥(りんていげつが)行政長官は中国支持を表明し、対象になるのは「ごく少数の犯罪分子」と説明する。だが疑問だ。中国は一部の学生らの過激な行動をテロと批判し、香港独立の主張や外国との連携を許さない方針だからだ。

 香港では新型コロナウイルスの感染防止もあり、集会が禁止されてきたが、民主派は今後、抗議活動を活発化させるだろう。香港の将来を憂える若者たちも簡単に矛を収めるとは思えない。

 旧宗主国の英国や欧州連合(EU)は香港の制度の「50年不変」を約束した1984年の中英共同宣言違反と批判する。コロナ禍で対立を深める米国は中国や香港への制裁を検討している。

 各国は「1国2制度」を前提に香港を中国とは別の関税区として優遇してきた。それが制裁で見直されれば、金融だけでなく自由貿易港としての地位も危機に陥る。

 香港に進出する外国企業の中で日本企業は最も多い。日中関係の安定のためにも政府は中国に率直に懸念を伝え、香港での自由な政治、経済活動の維持や「1国2制度」の堅持を求めていくべきだ。

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