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特権を問う

米軍側の「不起訴要求」に複数の証言 日米地位協定が司法にもたらす闇

米軍関係者に対する捜査対応などをまとめた検察の内部資料。1972年作成で日本語と英語の資料を含め約490ページある。改訂版が出ているが、中枢部分の内容はほとんど変わらないまま、現在も実務に使われている=2020年3月、玉城達郎撮影

 在日米軍のさまざまな問題を生む元凶ともいわれている日米地位協定は一度も改定されないまま、締結60年を迎えた。中でも問題を指摘されているのが刑事手続きの領域だ。捜査や起訴といった司法の根幹に関わるところで、米軍に対する多くの特別待遇が存在している。

 「公務証明書を出されると我々にはどうすることもできない」。かつて米軍関係者を起訴できなかった経験がある元検察官は苦い表情で捜査を振り返る。

 日本の捜査当局による米軍捜査で、最初の大きな壁になるのが「公務中」であることだ。公務中の事件・事故は米国側に第1次裁判権があり、日本の刑事裁判にかけることは難しい。

 東京都八王子市で2005年に車で小学生3人をはねて重軽傷を負わせ、救護せずに逃げた容疑に問われた米軍厚木基地の上等水兵も緊急逮捕後、公務中を理由に即日釈放された。実刑が言い渡される可能性もあった事案だが、水兵は日本で起訴されず、米軍当局から減給などの懲戒処分を受けただけだった。

 公務中に当たるかは1957年に群馬県で主婦が米兵に銃撃されて死亡したジラード事件などで日米双方の主張が対立したこともある。また、飲酒運転を巡っては、公の会合における飲酒であれば公務中と認めうる内容で56年に合意していたことが発覚。2011年に公務中と認めないように規定を変更している。

 さらに、公務外で日本側に1次裁判権がある場合でも、米軍側が日本の捜査当局に不起訴を求めるケースがあることが分かった。

 神奈川県横須賀市で14年に米軍関係者が運転する車と事故に遭った自営業男性(44)の代理人を務めた呉東(ごとう)正彦弁護士は、相手側が民事裁判に提出してきた米軍の公文書を読んで驚いた。「起訴はなされるべきではないことを要求する」。米軍側が捜査を担当する横浜地検横須賀支部長に対して不起訴を求めた記載があったからだ。

 男性は米兵の妻が運転する車にバイクごと飛ばされ、背中などを負傷したという。相手側は男性の自宅までやって来て「moshiwakearimasen」(申し訳ありません)などと書いた紙を渡して謝罪した。しかし、その後は過失を否定し、保険の使用も認めなかった。

 米軍の要求が捜査に与えた影響は分からないものの、検察は不起訴を選択した。呉東弁護士は「不起訴要求は日本の捜査当局に対する圧力だ」とみる。民事裁判で相手側は一定の過失を認めたが、事故から和解まで3年かかった。今でも雨が降ると背中が痛む男性は「米軍はやっぱり優遇されている。こんなのおかしくありませんか」と憤る。

 今回の毎日新聞の取材に、複数の捜査関係者が米軍から口頭などで不起訴を求められることはあると証言した。在日米軍司令部は不起訴要求についての質問に「自国民に対する裁判権を最大化するのが米国の政策だ。私たちは自国の司法制度で自国民の責任を問えるよう日常的に事件を移送するよう、日本側に依頼している」と回答している。

 法務省の担当者は「起訴・不起訴の判断は日本側でしている」と捜査への影響を否定する。一方、ある捜査関係者は取材に「要求があれ…

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