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アスベスト工場の周辺住民3割が石綿吸い込む 27自治体 環境省調査

環境省が入る中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で、竹内紀臣撮影

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 過去にアスベスト(石綿)を扱う工場などがあった地域住民の健康状態を観察するため環境省が2015年度から一部自治体で毎年行った試行調査において、19年度までの全てで、検査希望者の3割以上から石綿を吸い込んだ人にみられる所見が認められた。石綿は少量でも中皮腫を将来発症するリスクがあるとされる。影響が周辺住民にも広がっていることを改めて示したといえ、同省は今年度から、既存の住民検診を活用し対象地域もさらに広げることを検討している。

中皮腫などの発症者「もっと多いはず」

アスベスト(石綿)を巡る主な動き

 石綿の健康被害を巡っては、兵庫県尼崎市の旧クボタ神崎工場の周辺住民に、石綿関連がんである中皮腫の発症者が相次いでいることが05年に発覚。環境省は06年以降、尼崎市や大阪府泉南地域など工場があった7府県の16自治体の住民を対象に、発症の有無を調べる実態調査を行ってきた。

 ところが発症の仕方に個人差があったことから、環境省は住民の影響を調べるためには、吸い込んだ石綿の量と発症リスクの関連などをより詳しく分析する必要があると判断。15年度から対象地域を拡大し、希望する住民に年1回、医師による問診や保健指導、コンピューター断層撮影(CT)やレントゲン検査などを無料で行ってきた。

 調査は毎年度実施し、19年度までに9都府県の27自治体が参加。環境省によると、19年度は1771人が検査を受け、うち666人(37.6%)から、石綿吸入によって肺の外側の膜が厚くなる「胸膜プラーク」などが見つかった。15~18年度も、石綿吸入が確認された人の割合は31.9~38.6%で、石綿の影響を受ける周辺住民が少なくないことを示した。ただ治療が難しい中皮腫や肺がんなど石綿関連疾患の診断に結びついたのは、5年間で58人にとどまった。

 一方、希望者は翌年以降の検査も受けることができたため、19年度は約7割が2年以上連続で受検しており、発症するリスクのある住民を広く把握する難しさも浮き彫りになった。石綿関連疾患の潜伏期間は平均40年と長く、仕事に直接携わっておらず吸い込んだ自覚がないため検査を希望しない人も多いとみられる。

 環境省の調査検討会の委員を務める中野孝司・兵庫医科大名誉教授は「一般環境での低濃度暴露でも疾患を発症するリスクがある。発症者はもっと多いはずだが、今のスキームではすくい上げることができず、より間口を広げる必要がある」と話す。

吹き付けられた石綿=東京労働安全衛生センター提供

 環境省はより広く健康影響を調べるため「将来的には全国一律で発症の有無を検査できる体制を整えていきたい」としており、自治体が実施している既存の肺がん検診などの中で、発症リスクが高いと医師が判断した人にはCT検査も行うようにすることなどを検討している。【岩崎歩】

調査対象になった27自治体

 大阪市、堺市、岸和田市、貝塚市、八尾市、泉佐野市、河内長野市、和泉市、東大阪市、泉南市、阪南市、熊取町、田尻町、岬町(以上大阪府)、神戸市、尼崎市、西宮市、芦屋市、加古川市、宝塚市(以上兵庫県)、奈良県、北九州市門司区、鳥栖市(佐賀県)、羽島市(岐阜県)、横浜市鶴見区、さいたま市、大田区(東京都)

※途中から加わった自治体を含む

環境省試行調査で石綿を吸い込んだ所見が確認された人の割合

年度①検査を受けた人②所見が確認された人③割合

2015①1566②604③38.6%

2016①1481②563③38.0%

2017①1857②631③34.0%

2018①2261②721③31.9%

2019①1771②666③37.6%

※複数年にわたり検査を受けている人も含む

アスベスト(石綿)

 天然に生成された繊維状の鉱物。安価で耐火性や断熱性が高く、かつては建物の建材や工業製品などに広く使われた。国内では現在、使用が全面的に禁止されている。吸い込むと、平均40年の潜伏期間を経て、中皮腫や肺がんなどを発症する危険性があるため、「静かな時限爆弾」と呼ばれる。中皮腫は治療が難しいがんに位置づけられ、厚生労働省の統計によると、国内の中皮腫による死者は2018年が1512人で、国が統計を取り始めた1995年の3倍以上に。石綿由来の肺がん死者の統計はないが、国際的には中皮腫の2倍以上いるとされる。

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