特集

新型コロナウイルス

新型コロナウイルスのニュース、国内での感染状況を報告します。

特集一覧

「国民監視」懸念も コロナ対策「切り札」のマイナンバー改革 政府思惑は

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
自治体の窓口にはマイナンバー関連の手続きで早朝から行列ができていた=東京都品川区の品川区役所で5月14日午前8時23分、道永竜命撮影
自治体の窓口にはマイナンバー関連の手続きで早朝から行列ができていた=東京都品川区の品川区役所で5月14日午前8時23分、道永竜命撮影

 政府がマイナンバー改革を本格始動させる。新型コロナウイルスの感染拡大で「本当に困っている人」を特定するため、全ての口座情報とひも付けし、資産状況を把握できる仕組みを目指す。ただ、国民監視のツールにもなりかねない制度改正だけに反発も予想され、支持率の低下した安倍晋三政権の下で実現するかは見通せない。

生活困窮者支援「スピード」と「線引き」

 「全ての口座にひも付けできたら、国民の負担軽減につながる」。高市早苗総務相は5月22日の記者会見で、マイナンバーを新型コロナウイルス対応の「切り札」にする考えを強調した。

 政府はマイナンバー制度改革を2段階で改革していく方針だ。「第1段階」では一つの口座とひも付け、給付金の振込先として管理し、「スピード」支給につなげる。ただ、複数の仕事を持つ人の所得や資産を全て把握しない限り、困窮者だけに絞る「線引き」支給はできない。このため、全口座とひも付ける「第2段階」が改革の本丸となる。

 世界では多くの国が迅速に現金給付を実施している。番号制度を活用して国民の資産状況を把握しているためで、「too little、too late(小さすぎて遅すぎる)」との批判を浴びた日本の給付策とは大きく異なる。

 例えば、米国は社会保障番号(ソーシャル・セキュリティー・ナンバー)と税務申告データをもとに支給対象者を選定。総額2兆ドル(約220兆円)規模の経済対策は3月下旬に決定したが、1~2週間ほどで現金を口座に振り込んだ。国民の側から申請する必要はなく、政府の側から通知する「プッシュ型」で支援している。日本のように高額所得者まで現金を給付する一律給付ではないため、財政への打撃も小さい。

 日本も当初は生活困窮者に絞った30万円の給付を目指したが、番号で収入の減少状況を把握することができないため、申請条件が複雑化。結局、一律給付にせざるを得ず、政府内には「口座情報がマイナンバーとひも付いていれば、本当に困っている人にだけ支給できたのに」(経済官庁幹部)と悔やむ声が出ている。

 現在も口座情報とのひも付けは「任意」で行われており、全国銀行協会によると、ひも付いているのは、個人預金を取り扱う163行で972万件(2019年末現在)。日本にある口座数は、銀行、信用金庫、ゆうちょで計約10億口座とされ、1%に満たない水準だ。政府内には「マイナンバーにかつてないほど関心が高まっている。これを機に理解が広がってほしい」との期待が広がる。

 とはいえ、政府が国民の資産を把握できてしまうことへの反発は強いとみられる。麻生太郎財務相は5月26日の記者会見で…

この記事は有料記事です。

残り2080文字(全文3169文字)

【新型コロナウイルス】

時系列で見る

関連記事

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月

ニュース特集