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余録

毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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<愕然として昼寝覚めたる一人かな/河東碧梧桐>…

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 <愕然(がくぜん)として昼寝覚めたる一人かな/河東碧梧桐(かわひがし・へきごとう)>。ハッと目が覚めると昼の光、あれ? 今どこか……。ややあって、家で昼寝をしていたんだとホッとする。「昼寝覚(ひるねざめ)」は夏の季語「昼寝」の副題である▲<魂が身にぶつつかり昼寝覚め/上野泰(うえの・やすし)>。寝入ったところでフワリと身を抜けでて浮遊した魂が、何かの拍子に体にぶっつかりビックリ目覚める。気持ちよく寝ていたのが、何かでドキッと起きる昼寝覚めが実にこんな感じである▲<はるかまで旅してゐたり昼寝覚/森澄雄(もり・すみお)>。アワが煮えるまでのうたた寝の間に、50年にわたる波瀾万丈(はらんばんじょう)の人生を夢で体験する「邯鄲(かんたん)の夢」の故事もある昼寝である。夢もこんな大作ともなると昼寝覚の感慨も並大抵ではあるまい▲コロナ禍により自宅での昼寝でハッと目が覚めることの増えた方が多かろう。季節は昼のまどろみに最適、テレワーク中でもウトウトできるのが会社と違う。「パワーナップ」と呼ばれる短時間の昼寝が日課となった方もおられよう▲心の健康のために十分な睡眠が必要なコロナ不安のさなか、注意したいのは昼寝の時間という。長時間の昼寝は夜の睡眠の妨げとなってしまう。20~30分にとどめれば、文字通りテレワークの能率アップをもたらしてくれるそうだ▲<生き返る方をえらんで昼寝覚/井上菜摘子(いのうえ・なつみこ)>。夢で三途(さんず)の川岸まで行ったようなおもしろ怖い句で、目覚めたいつもの家のたたずまいがありがたく見えよう。時空を超える扉もある「新たな日常」の午後だ。

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