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社説

種苗法の改正 農家の不安解消が先決だ

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 ブランド農作物の海外流出防止を掲げた種苗(しゅびょう)法改正案は、今国会での成立が見送りとなりそうだ。農家の一部に根強い不安がある中、十分な審議時間を確保できないためだ。

 ブドウのシャインマスカットやイチゴのあまおうなど、国内で開発された種苗が海外に持ち出され、現地ブランドで栽培される事例が相次いだ。改正案は、新品種を開発した育成者が栽培地を指定できるようにして、流出を防ぐ。

 焦点は、農家が収穫物から種を取り出して収穫を繰り返す「自家増殖」の制限だ。現在は原則自由だが、育成者の許諾なしには行えない仕組みに変え、種苗の管理を徹底する。

 これに対し、自家増殖をしている農家は、許諾料などで種苗の費用が高騰しないか心配している。

 女優の柴咲コウさんがツイッターで問題提起し、注目を集めた。

 背景には、品種開発の担い手を公的機関から民間に移す規制緩和を、政府が進めていることへの警戒感がある。

 例えば、都道府県がコメなどの種子を安定的に供給するよう定めた主要農作物種子法が2018年に廃止され、「多国籍企業が参入して国内市場が寡占状態になり、種苗価格をつり上げるのではないか」といった疑念を招いた。

 自家増殖が規制されるのは品種登録されたブランドだけで、全体の約1割にとどまるという。営利目的でない農業試験場などの公的機関が保有する種苗も多い。このため農林水産省は「農家の負担はほとんど増えない」と説明する。

 ただ、懸念を打ち消すための取り組みは十分とはいえない。

 不公正取引の監視体制を強化するなど、農家の不安を解消する手立てが求められよう。種苗の価格交渉を農家に代わって農協がまとめて行い、交渉力を高めるといった工夫も必要だ。

 そもそも、品種開発には10年単位の期間と多額の費用がかかる。育成者も適正な利益を得ないと開発を続けられないのは確かだ。それでも、農家の収量や販売が増えて所得が増えるような関係を築かなければ、理解は進まない。

 農家ばかりに負担が集まる制度にならないよう、徹底した議論を求めたい。

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