芸能人の権利擁護に取り組む佐藤大和弁護士=東京都文京区で2020年6月1日、大迫麻記子撮影

 恋愛リアリティー番組に出演し急死した女子プロレス選手は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)による誹謗(ひぼう)中傷にさらされていた。標的になってしまった場合、どういう対応方法があるのか。また、現在の救済制度をどう改善すべきなのか。芸能人の権利擁護に取り組んできた佐藤大和弁護士(37)は、「『共謀しない集団』による誹謗中傷は新しい形の暴力。被害者を守る仕組みを早急に整えるべきだ」と指摘する。【大迫麻記子/統合デジタル取材センター】

スムーズに進まない「三つの裁判」

 ――誹謗中傷を受けた人に対し、どのように対応してきましたか。

 ◆過剰報道やネットでの炎上、誹謗中傷に悩む芸能人らの案件を約40件、手がけてきました。誹謗中傷する書き込みをしているのはごく一部の人でも、たいていの被害者は、日本中、世界中から嫌われているような気持ちになり、落ち込んでしまいます。気になり出すと自分について書かれた情報を確認してしまう人が多いので、まずは見ないようにして精神的に落ち着いてもらうのが重要になります。

 ――法的な対応はどのように進めますか。

 ◆慰謝料を請求する民事による対応と、名誉毀損(きそん)・脅迫などを理由に警察に対して被害届を出す刑事による対応があります。ただ実際にはどちらも、解決には制度として不十分だと言わざるを得ません。

 たとえば「消えろ」という言葉は人を傷つけるひどいフレーズですが、この1回だけでただちに違法性を問えるかといえば難しいでしょう。違法性を問えるのは、犯罪行為の脅迫に該当する「殺すぞ」のような書き込みや、人格を否定する「ウソつき」「バカ」「小学生みたいだ」といった内容を何回もしつこく書き込む、といった場合です。そして、民事で慰謝料を請求しようとすると、よく指摘されることですが、基本的に3回もの裁判を起こさなければなりません。それは①まずSNS各社に対し、IPアドレスの開示を求める②プロバイダーに対し、このIPアドレスの所有者の開示を求める③相手を特定して損害賠償請求訴訟を起こす――です。

 しかしこれがなかなかスムーズに進みません。私の経験では、SNS事業者は任意で情報開示をすることは少ない。書き込み…

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