沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場で環境汚染事故が起き、日本政府と地元自治体による施設内への立ち入り調査が行われた。その調査に関し、大きな制約があることが浮き彫りになった。
事故は4月10日に起きた。飛行場の消火システムが誤作動し、発がん性が指摘される有機フッ素化合物PFOSを含む泡消火剤が大量に敷地外に流出した。
泡は用水路をつたい、風にあおられて市街地に飛散した。流出した量は、約14万3000リットルで、ドラム缶約720本分に上った。
日本政府は、米側に抗議したうえで、日米地位協定の「環境補足協定」に基づく調査を14日に要請した。事故について調査が行われたのは、2015年に補足協定が発効してから初めてだった。
環境に影響を及ぼす事故が起きた時の立ち入り調査やサンプル採取の手続きは、補足協定に基づく日米合意で定められている。
日本側が申請し、それを米側が認めて初めて実施できる。さらに、「米軍の運用を妨げない方法によってのみ行うことができる」と定められており、米側に認められている裁量が極めて大きい。
米側は今回、地元自治体の求めに応じて水や土壌のサンプルを採取し、一部を日本側に提供した。しかし、米側は沖縄県が求めた全ての地点での採取を行わなかった。これでは、調査の透明性を十分保つことはできない。
しかも、日本側に提供されたのは、水が事故の11日後で、土壌は3週間以上たってからだ。米側の対応はあまりにも遅い。
壁となっているのは、日米地位協定だ。駐留米軍の施設や区域の管理権は米側にある。米軍には日本の国内法は原則適用されない。
ドイツでは米軍に国内法が適用され、イタリアではイタリア軍が米軍基地を管理している。汚染事故があれば、許可なく立ち入り調査をする権限も認められている。
在日米軍基地の周辺では、PFOSをはじめとした有害物質の流出が疑われる事案が絶えない。日本政府が主導し、透明性のある調査が速やかに実施できる体制を作ることが急務だ。
これを機会に、問題の根本にある日米地位協定の見直しも米側に提起すべきだ。