SNS規制にひそむ権力者の思惑 世界の動きと日本に必要なこと 政治学者に聞く
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会員制交流サイト(SNS)に対し、世界各国で規制を強める動きが加速している。米国ではトランプ大統領がSNSに対する監視強化の姿勢を打ち出し、日本政府もSNSでの誹謗(ひぼう)中傷への対策の検討を始めた。だが、利用者保護などを隠れみのに、政府が自らに都合の悪い情報や意見を封じ込める懸念もある。世界のインターネット規制に詳しい清泉女子大学の山本達也教授(政治学)は「大義名分ではなく、規制の仕方に目を向けると、権力者の本音が見えてくる」と指摘する。【宮崎稔樹/経済部】
権力者の都合のよい仕組みではないか、注意必要
――人気リアリティー番組「テラスハウス」の出演者がSNS上で中傷された後に死亡したことを受け、発信者の情報開示に関する制度改正の検討が政府によって進められています。国際的な視点からは、こうした動きをどう見ますか。
◆利用者保護を重視する世論を考えると、大きな流れとしては、世界全体で規制を強化する方向に向かっていくことは間違いありません。ただ、この問題は段階を分けて考える必要があります。一つは法律的に「この投稿が表現の自由の範囲なのか、それとも中傷や人種差別に当たるのか」という解釈を争う問題。もう一つは、規制の強化が、表現の自由にどんな影響を及ぼすかという問題です。
多くの人は自由と安全をてんびんにかければ、安全を優先し、規制を受け入れます。ただ、自由の重要性は、権力側に対して声を上げなければならなくなった時に初めて気付くもの。自由に動いているつもりが、鎖の長さの範囲外に出ようとした時に初めて自分に首輪があって縛られていることに気付く。ネット規制についても同じで、「いつの間にか権力者に異議を唱えにくい世の中になっていた」という事態は避けなければなりません。
日本政府は今、テラスハウスの痛ましい出来事が起きたことで、規制の大義名分を得ています。権力者にとって都合の良い仕組みにしようとしているのか、それとも妥当な範囲内の仕組みなのかを見ていくことが必要です。
規制の「理由」よりも「やり方」でわかる為政者の意図
――どのような点に注意すべきでしょうか。
◆私が最も注目するのは、「WHY(なぜ)」ではなく、「HOW(どのように)」です。どのような形で規制を強化するのかを分析すると、政府の意図が透けて見え…
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