「日本の食を守りたいという思いは同じ」種苗法改正案と農業の未来 東大・鈴木教授の徹底解説

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東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘教授=鈴木教授提供
東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘教授=鈴木教授提供

 民間企業の参入を促して競争力を高めることが、日本の貴重な在来種の多様性を脅かすことになる--。ブランド農産品種の苗木などを海外に持ち出すことを規制する種苗法改正案は、今国会で成立が見送りとなった。東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘教授は、民間参入を促す目的で2018年に種子法が廃止され、種苗法の改正が進められることで、地域の在来種を失う危険性があると指摘。「日本の食を守りたいという思いは、みな同じ。農業の未来について国民的議論を」と訴える。【ニュース解説まいもく班】

 --日本は、種子法を廃止して、種苗法も改正するとなると、国としてどのような農業を目指しているのでしょうか。

 鈴木教授 農林水産省は、日本の農業、農家を守り、国民に安全安心な食料を提供しよう思いはもちろんあります。今回も、海外への持ち出しを何とか止めて、海外への流出を防ぎたいと。彼らは真剣に考えていると思います。

 ただ、その担当部局の思いとは別の次元で、日本でもっともうけたいグローバル企業の思惑がかなり働いている可能性があります。

 種子法を勝手に廃止し、企業に種を渡しましょう、自家採種をやめて種を買わないと……という話がつながってくると、これは日本の農業のためなのでしょうか。むしろグローバル企業が日本でもうけるための、環境整備をしているのではないかというところが問われてくるのでないかと思います。

 規制緩和はいいことだ、民間参入はいいことだという議論だけを前面に出してきているとすれば、それは将来構想がまったくない。長期的な視点というものが欠如しているのではないでしょうか。

家族単位の小規模農家に大きな影響

 --農家を守るといっても、日本の農業もさまざま。大規模なところもあれば、家族単位のところもあるのでは。

 鈴木教授 非常に大きな農家は、種はすでにほぼ購入したものを使っています。自家採種しても同じものができないため、買わざるを得ません。日本の90%の野菜の種が、海外の畑で種取りされています。ある意味、すでにもう海外企業にコントロールされている状況になっています。

 巨大な野菜農家にとっては当たり前になっているので、それほど影響はありません。しかし、農林水産省のアンケート調査では、自分で種取りをしていると答えている野菜農家は74%もいます。

 小規模な家族経営が多くあり、伝統的な種を自分で種取りして頑…

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