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余録

毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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おなかの突き出たひげ面の男性が…

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 おなかの突き出たひげ面の男性が、子供施設でメルヘン調の絵を描いていたら、ゲンさんかもしれない。京都府出身の玉井源人(げんと)さん(47)。美大卒業後、自ら保育園や幼稚園を訪ね、塀や壁に塗料で絵を描いた。「子供はうそをつかれへん。だから子供のために描くのは楽しい」▲口コミで評判が広がり、仕事依頼が増えた。回った施設は北海道から沖縄まで全国に約500。今では注文が絶えない▲トイレの壁に可愛いクマを描くと、一人でトイレに行けなかった子が「先生、もう付いて来なくていい」と言った。しっくいの防菌、防臭効果を念頭に10年前、ゆるキャラ「しっくい丸」を生む。子供を病気や悪臭から守るため、ローラー片手にしっくいを塗る忍者のイメージだ▲先週末、埼玉県熊谷市の「まことこども園」に、汗だくのゲンさんがいた。塀には色とりどりのシャボン玉の絵。風に吹かれ玉が飛んでいる様子に、登園中の親子が言った。「園が明るくなったね」▲新型コロナウイルスの緊急事態宣言が解け、元気な声が戻ってきた。ただ、棚澤(たなざわ)千登世教頭によると、緊張している親子は少なくない。手洗い励行、「3密」警戒。子供にもストレスはある。かつてトイレを怖がった子を救ったように、絵で恐怖心を和らげたい。ゲンさんの思いだ▲来週から弟子の木津幹博さん(41)と2人で沖縄を回る。4月に作ったゲンさんの名刺には、体重100キロに似合わぬ小さな字で決意表明があった。「子供たちの未来を描きつづけます」

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