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第103回全国高校野球選手権

第103回全国高校野球選手権大会(8月10~29日)の特集サイトです。

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春の涙、笑顔に変わった 「チーム一丸」「勝ちにいく」

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明るい表情で練習に臨む磐城の選手たち=福島県いわき市で10日、和田大典撮影典撮影 拡大
明るい表情で練習に臨む磐城の選手たち=福島県いわき市で10日、和田大典撮影典撮影

 新型コロナウイルスの影響で中止となった第92回選抜高校野球大会出場校の野球部員たちを「甲子園」での試合に招待する「2020年甲子園高校野球交流試合(仮称)」の開催が10日決まった。既に夏の甲子園大会も中止が決まっており、春夏の夢舞台を失った選手たちへのせめてもの贈りものとなった。選手たちは憧れの地で試合ができる喜びをかみしめ、春夏とは違う新たな舞台に向け、「勝ちにいきたい」と早くも闘志をたぎらせていた。

「忍耐」心の支え 21世紀枠・磐城

 センバツに21世紀枠で選出されていた磐城(福島)。10日夕、練習中に吉田強栄校長から交流試合の開催決定を伝えられると、ナインに笑みが浮かんだ。渡辺純監督は「(4月に)着任してから、ずっと部員たちの悲しい顔を見てきた。やっとうれしそうな顔を見られた」とホッとした表情を見せ、「高校野球を最高の舞台で終えられる人は少ない。全力で戦いたい」と決意を新たにした。

吉田健人部長(手前)から交流試合の開催を伝えられる山梨学院の部員たち=甲府市で10日、玉城達郎撮影 拡大
吉田健人部長(手前)から交流試合の開催を伝えられる山梨学院の部員たち=甲府市で10日、玉城達郎撮影

 岩間涼星主将(3年)は「(センバツ中止が決まった時は)野球の神様はいないのかと落ち込んだ。でも(3月で退任した)木村(保)前監督が残した『忍耐』という言葉が心の支えとなって頑張ってこられた」と振り返った。一時は受験勉強に専念しようとしていた選手もいたというが、「野球も勉強も(部訓の)Play Hardで最後まで頑張ろう」と誓い合っていたという。「交流試合開催決定は奇跡。チーム一丸となり、(チームカラーの)コバルトブルーのプライドで試合に臨みたい」

 木村前監督も取材に応じ「(センバツ中止で)選手たちは、はい上がれないほど苦しい日々が続いた。甲子園で躍動してほしい」とエールを送った。

 真夏日となった北海道帯広市。同じく21世紀枠だった帯広農のグラウンドでは、野球部の大久保聡彦部長が交流試合への招待を選手に伝え、「感謝の気持ちを持って甲子園で勝負してほしい」と話した。

米山学監督(手前)から交流試合について話を聞く加藤学園の選手たち=静岡県沼津市で10日、長谷川直亮撮影 拡大
米山学監督(手前)から交流試合について話を聞く加藤学園の選手たち=静岡県沼津市で10日、長谷川直亮撮影

 緊急事態宣言も解除され、学校が再開した1日、野球部は約1カ月半ぶりに全体練習を開始。道高校野球連盟が開催する代替地方大会を目標に動き始めていた。新たな目標に加わった交流試合に井村塁主将(3年)は「思い出作りではなく、勝ちにいきたい」と意欲をみせた。

 グラウンドでは3月末の定年退職前まで野球部長を務めた白木繁夫さんがコーチとしてチームを支える。「1試合でも選手がグラウンドに立つことができるのはうれしい。私もノッカーとしてグラウンドに立てるかな」と語った。

 同じく21世紀枠で選ばれていた平田(島根)では10日夕、グラウンドで練習前のストレッチを終えた選手たちに集合がかかり、坂根昌宏校長が「おめでとう」と語りかけた。保科陽太(ひなた)主将(3年)は「甲子園を目標に苦しい練習を積んできた。本当にうれしい」と笑顔がはじけた。【磯貝映奈、三沢邦彦、小坂春乃】

「自分の投球試す」 加藤学園・主戦

 2年連続4回目のセンバツ出場を決めていた山梨学院(山梨)のグラウンドでは10日夕、吉田健人部長が集まった部員たちに交流試合の開催を伝えた。吉田部長は「与えられた機会を楽しんでほしい」などと語りかけ、選手たちは真剣な表情で耳を傾けた。

 㓛刀(くぬぎ)史也主将(3年)は「1試合だけでも甲子園で試合ができるのはありがたい」と感謝。吉田洸二監督は「生徒たちは、多くの人たちの協力で甲子園に立たせてもらえることをかみしめ、感謝し、いつか恩返しできる人間になってほしい」と期待を込めた。

 センバツに初出場する予定だった加藤学園(静岡)の部員たちも、交流試合開催の一報をかみしめた。10日夕の練習開始前、米山学監督がグラウンドに集まった部員たちに「腐らずにやればよいことがある。周囲の思いに応えよう」と呼びかけた。勝又友則主将(3年)は「いろいろな人たちのおかげで甲子園でのプレーがかない、感謝したい」。主戦の肥沼(こいぬま)竣投手(3年)も「甲子園を諦めきれなかった。自分のピッチングが通用するか試したい」と意欲を見せた。【金子昇太、深野麟之介】

「心込めて試合」 国士舘

 新型コロナウイルスへの警戒を呼びかける「東京アラート」が出ている東京の国士舘は10日夕、文書でコメントを出した。永田昌弘監督は「一度は諦めた甲子園球場での試合の機会をいただき、心からうれしく思います」と率直に喜んだ。岩渕公一校長も「出場に向けた万全の対策を検討してまいる所存です」と、安全対策の徹底を強調した。

 3年生部員は学校再開翌日の今月2日、短時間ながらグラウンドでの練習を再開した。永田監督は「都代表としての誇りと、これまで支えてくださった方々への感謝を胸に、その1試合に心を込めて臨みたい」と結んだ。【川村咲平】

「一生の記念に」 甲子園近くの食堂

 東京都新宿区の野球用品専門店「ベースマン飯田橋本店」の伊藤博光店長(46)は「春夏の甲子園大会が中止となり、特に高校3年生は目標が失われ、プロや大学にアピールする場もなかった。交流試合の開催で彼らの将来の可能性が少しでも広がれば良い」と喜んだ。同店の客足は新型コロナウイルスの感染拡大で一時減っていたが、6月は戻りつつあるといい「野球自体が盛り上がってほしい」と期待した。

 センバツ交流試合が行われる阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)近くで「大力食堂」を営む藤坂悦夫さん(81)、初枝さん(78)夫婦は「球児の一生の記念になるだろう」と万歳をして喜んだ。名物のカツ丼が「勝負メシ」として知られる名店。悦夫さんは「全国から選手が来ると周辺の活気が違う」と話し、初枝さんは「球児が最後に甲子園の土を踏むことができてよかった」とホッとした様子だった。【松浦吉剛、峰本浩二】

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