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食品廃棄削減へ仲間作る 通販サイト「ロスゼロ」を運営 文美月さん=中川悠 /大阪

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ビデオ会議システム「Zoom」で取材を受ける文美月さん 拡大
ビデオ会議システム「Zoom」で取材を受ける文美月さん

 コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除され、休業していた店舗がオープンし始めた。しかし、経済は平時に戻っているとは言い難い。ホテルや飲食店が得意先だった農業などの生産者は、この間に大量に余った収穫物の買い手を探している。食品メーカーには在庫が積み上がる。再開した飲食店は、感染防止対策で座席数を大幅に減らしてのスタート。その中で、大量の食品廃棄が社会問題になっている。

 「今回のコロナショックでそもそも商品が全く売れなくなってしまい、世の中の廃棄食品は一気に増えた」。そう話すのは、食品ロス削減を目指すインターネット通販サイト「ロスゼロ」を運営する文美月(ぶんみつき)さん(49)=ビューティフルスマイル(大阪市)代表取締役=だ。

 生産者、メーカー、流通業などは食品の賞味期限が近づくと捨てるか、激安店に販売するかなど頭を悩ませている。ロスゼロのキャッチコピーは「ロスが減る。笑顔が増える」。賞味期限内ながら廃棄対象となる商品を買い取り、安価で販売するプラットフォームで、2年前にスタートした。コロナ問題が起き、休業要請や外出自粛で収入が減り、自宅で過ごす顧客などから注文が集まる一方、在庫を抱える多くのメーカーを支える。

「ロスゼロ」のホームページ 拡大
「ロスゼロ」のホームページ

 サイト開設のきっかけについて、文さんは「仕事仲間のある製菓会社から『月400キロもの菓子を捨てなければいけない』と悩み相談を受けたこと」と振り返る。激安店への卸や自社でのセールでブランド価値を下げたくないと、毎月費用をかけて廃棄していたという。

 文さんは以前からヘアアクセサリーをカンボジアに贈り、現地の子どもたちを応援する取り組みを続けていた。「カンボジア支援では、関わる人たち全員が仲間になってくれる。ある時、気付いたんです。海外支援も食品廃棄削減も、地球全体で考えればどちらも未来を良くするアクションなんだと」

 ロスゼロのサイトを通して「食品メーカーもお客様も食品廃棄をゼロにするための仲間。みんなで一緒に解決をしていこう」と訴えた。すると、次々にその思いに賛同するメーカーが現れた。「廃棄問題を解決する方法を見つけられた」と声が寄せられ、新しい出会いが生まれていった。

 国連が定めた2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)。17目標のうち12番目の「つくる責任、つかう責任」では、世界の1人当たり食料廃棄の半減を掲げる。日本でも19年10月に食品ロス削減推進法が施行され、食品ロスの定義や削減の進め方について基本方針が決まった。

 食品ロス削減を実現するために必要なことは「ロスを誰かと分け合う努力」と「廃棄を減らす努力」だ。文さんは「これからは今まで以上にこの二つを実現するための相談に乗っていきたい」と語る。

 文さんの会社には、食品廃棄に悩む数多くの企業から相談が舞い込む。新しいパートナーが現れるたび、彼女が伝える言葉がある。「一緒に世界の食品廃棄をゼロにする仲間になりましょう」。コロナと歩む時代の中でも、希望を見いだそうとしている。


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

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