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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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雨乞いのため牛や羊などをいけにえにする儀式は…

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 雨乞(あまご)いのため牛や羊などをいけにえにする儀式はアジアやアフリカで広く見られたようだ。英人類学者フレーザーの「金枝篇(きんしへん)」によれば、犠牲となるのは黒い牛や羊などで、雨を降らせる黒雲を連想させたからだ▲似たもの同士を結びつける呪(じゅ)術(じゅつ)的思考は、世界各地にある。「金枝篇」は黒い豚で雨乞いをし、白い豚で雨を止める儀式をしていた部族も紹介している。この白は太陽の連想で、雨の多い土地では長雨を止める呪術も欠かせなかった▲古代日本でも神社に奉納する馬の色が黒なら雨乞い、白か赤ならば長雨を止める祈願とされた。神馬の奉納がやがて絵馬となったという京都の貴船(きふね)神社の言い伝えである。ほどよい降り方の調節を夢見てきた大昔からの日本人だった▲きのうまでに日本列島は東北地方南部まで梅雨入りした。梅雨前線は週末にかけ日本付近に停滞し、西日本から東日本まで広い範囲で大雨に警戒が必要という。胸をよぎるのは一昨年の西日本豪雨など、近年の暴れ梅雨の恐怖である▲とくに今年はコロナ禍との複合災害が心配される。各自治体では避難所での感染防止対策を進めているが、十分な態勢からはほど遠い。大雨の時には居住地の被害想定を見ながら、親類や知人宅への避難も選択肢とせねばなるまい▲黒か白かで降雨をあやつる術のほしいこと切実だが、思えば記録的豪雨の頻発を招いた地球温暖化も人の営みの結果だろう。気候変動と新型感染症の時代の「新たな日常」ともいえる今年の梅雨である。

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